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LowとChaosの間…
第12章 とぐろを巻く妻
ガンガンッと玄関を叩く。


やがてほんのりと玄関が明るくなった。

ロウソクの小さい明かりだ。

そして玄関の扉がゆっくり開く―-

「えっ…勇樹!?」

現われたのは、この金剛家の一人娘、金剛魅春(ミハル)。

漆黒の長い黒髪が、吹き込んだ冷たい風で舞い上がった。
顔には一瞬、戦慄が走ったように青ざめたかに見えたが、

男の名は金剛勇樹。
かつて金剛家の表向きは奴隷として下働きに従事していた人間である。

この、天部は魔人階級―-身分制度カーストがある。
彼は奴隷民にあたる最下位のシュードラであった。

勇樹が戸口に身を乗り出し、魅春のはるか頭上で扉の枠に片腕をつく。
軍服を着た上半身が覆いかぶさるように迫り、彼女は後退りしそうになるのを堪える。敵対勢力である天津の軍服であることは彼女にもわかる。

勇樹は白い肌だが、明かりを遮って浮かび上がる姿は、人間というより闇夜に潜む暗黒たる危険を感じる。
制帽を被る端正な顔立ちは知性と力強さにあふれる男性を強調した。

一瞬、彼の黒い目が自分を蔑むような気がした魅春は怒りで、そのまま扉を閉めたくなったが、華奢な魅春はつま先立ちになり、顎を突きだした。


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