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LowとChaosの間…
第12章 とぐろを巻く妻
武家の娘で妖魔である彼女が人間を恐れることがあってはならない。

そう、魅春は魔人なのだ。
夜叉と呼ばれる鬼神の血族。
美しい人間と同じ上半身とは裏腹に下半身は蛇の尾である。


この家は先の南北戦争で敗戦した連合軍毘沙門将の家臣の金剛バサラの屋敷なのだ。


「い、いまさら何のよッ!!」

武家の娘らしく毅然と振舞う魅春だが、少女時代に愛用した矢絣の小袖に海老茶袴姿である。

ほころびと継ぎ接ぎだらけの格好に勇樹は暗澹たる気持ちになった。

魅春は見た目もあどけない少女のような顔だが、年齢は30歳になろうとしている。

そして彼女の袴だけではない、見える範囲内だけでも薄っすらと埃をかぶる空間と色あせる絨毯と壁…

「いい女になったな…」

張り合おうとする彼女に勇樹は冷静に答えた。


「な、な、な……にゃ」

動揺しつつも戸を持つ魅春の指手には、力がこもる。

魅春はなんとか平静を取り繕い、強く答えた。

「帰って!」

「ふっ、ではそうさせてもらおう。ここは僕の生まれ育った家であり、僕が買い取った家だからな」

勇樹は強引に扉を開けると、魅春を押しのけて中に身を乗り出した。

「なにゃっ!?」

だが、勇樹自身の内心は困惑していた。
この金剛家のシュードラとして表向きは仕えていたが、実際は兄妹のように仲良く育ったのだ。


魅春が血の繋がりがなくても兄である勇樹に怒りをあらわにするにはワケがある……



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