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LowとChaosの間…
第22章 勇者vs英雄
屋敷の裏山にある林に二人の戦いを見守る女妖魔がいた。
生まれてから昨日までこの屋敷で暮らしてきた魅春である。活発でおてんばな性格から一転し勇樹と結婚してからは屋敷の家事を母とこなす以外は静かに過ごしてきた。
戦後の女妖魔は人間の慰み者として苦界の道をたどることになる。魅春は勇樹の配慮により苦界に身を投じることはなかったが、他の女妖魔たちを開放したのは皮肉にも魔王を名乗った紅蓮である。紅蓮の反乱後は天津の隷下といえど、再び大和の大地は妖魔の世界となった。
不思議な平和は短い。
間髪いれずに皇帝自らが大和に妖魔討伐隊を率いて進軍してきたのだから。
人間にとって皇帝は勇者であり、妖魔にとっては虐殺者である。
夫からは大和の妖魔たちと秘境に逃げるよう告げられる。
大和の鎮守府からは抗命を承知で軍人たちが妖魔を誘導した。人間では秘境に入れない。
それで皇帝の妖魔討伐は終わりとなるはずだった……。
だが、その皇帝を足止めしているのは自身の夫である。
駆けつければ既に血まみれで今にも朽ち果てようとしている。
「勇樹……英雄王を倒して……私のもとに帰ってきて……」
夫はもう死ぬ。わかっていても両手を握って目を強く瞑って神に祈った。涙がとめどなく溢れ息が詰まった。物心がつく前に屋敷には彼がいた。彼が屋敷を出るまで、いや、人生の全て味わった痛みは家族を守る為なのでは?
このまま彼の元へ駆け出し、一緒に死にたい。でも、彼はそれを嫌う。いつも妻が夫の仕事に口を出すなと叱咤されてきた。
「勇樹が死んだら……どうせ私は生きてはいけない。生きる意味もないわ……」
「魅春……」
魅春は呼ばれて振り返った。
「お母さん……お父さんも……どうして?」
魅春の背後から父と母が現れた。突然駆け出した娘を置いて秘境に行くことなどできはしない。
「小憎らしい息子と愛する娘と孫を放り出して逃げれるものか」
父の眼光は鋭く、怪我がなければあの場にすぐさま駆け込もうという勢いがあった。
「もぅあなたを説得できる言葉はお母さんには見つからない……好きにしなさい。お母さんだってそうするもの」
母の言葉に頷いた魅春は母と束の間の抱擁を交わした。
そして夫のもとへ駆け出した。
母は魅春と代わるように両手を組む。だが、心のなかは大地母神イザナミではない。勇樹の本当の母に向かって祈った。
生まれてから昨日までこの屋敷で暮らしてきた魅春である。活発でおてんばな性格から一転し勇樹と結婚してからは屋敷の家事を母とこなす以外は静かに過ごしてきた。
戦後の女妖魔は人間の慰み者として苦界の道をたどることになる。魅春は勇樹の配慮により苦界に身を投じることはなかったが、他の女妖魔たちを開放したのは皮肉にも魔王を名乗った紅蓮である。紅蓮の反乱後は天津の隷下といえど、再び大和の大地は妖魔の世界となった。
不思議な平和は短い。
間髪いれずに皇帝自らが大和に妖魔討伐隊を率いて進軍してきたのだから。
人間にとって皇帝は勇者であり、妖魔にとっては虐殺者である。
夫からは大和の妖魔たちと秘境に逃げるよう告げられる。
大和の鎮守府からは抗命を承知で軍人たちが妖魔を誘導した。人間では秘境に入れない。
それで皇帝の妖魔討伐は終わりとなるはずだった……。
だが、その皇帝を足止めしているのは自身の夫である。
駆けつければ既に血まみれで今にも朽ち果てようとしている。
「勇樹……英雄王を倒して……私のもとに帰ってきて……」
夫はもう死ぬ。わかっていても両手を握って目を強く瞑って神に祈った。涙がとめどなく溢れ息が詰まった。物心がつく前に屋敷には彼がいた。彼が屋敷を出るまで、いや、人生の全て味わった痛みは家族を守る為なのでは?
このまま彼の元へ駆け出し、一緒に死にたい。でも、彼はそれを嫌う。いつも妻が夫の仕事に口を出すなと叱咤されてきた。
「勇樹が死んだら……どうせ私は生きてはいけない。生きる意味もないわ……」
「魅春……」
魅春は呼ばれて振り返った。
「お母さん……お父さんも……どうして?」
魅春の背後から父と母が現れた。突然駆け出した娘を置いて秘境に行くことなどできはしない。
「小憎らしい息子と愛する娘と孫を放り出して逃げれるものか」
父の眼光は鋭く、怪我がなければあの場にすぐさま駆け込もうという勢いがあった。
「もぅあなたを説得できる言葉はお母さんには見つからない……好きにしなさい。お母さんだってそうするもの」
母の言葉に頷いた魅春は母と束の間の抱擁を交わした。
そして夫のもとへ駆け出した。
母は魅春と代わるように両手を組む。だが、心のなかは大地母神イザナミではない。勇樹の本当の母に向かって祈った。

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