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シロップ
第1章 シロップ
 3 イチゴ味のわたしは恋に焦がれ…

 週末の金曜日の午後三時…
『ピコン』と、デスクの上に置いてあるスマホのラインの着信音が鳴った。

 これは大学三年から約二年半付き合っている恋人からの、毎週末金曜日のこの時間に定期的に送られてくる、いつもの誘いのライン…

 生涯安定し、社会的にも認められ、誰からも羨ましがられる国家公務員という職業...
 彼は将来有望な都庁職員。

 優しくて、わたしのことを心から愛してくれている彼…
 
 そしてわたしが初めての女で、いや、まだわたしというオンナしか知らない彼…
 
 お坊ちゃま育ちで、まるで『練乳』みたいにこってりと、溶けるように甘い彼…

 そう彼とわたしはまるで…

『イチゴミルク』のように、恋に焦がれる…
 甘い恋人同士。

『今夜も来る?』
 そう、わたしは、ほぼ毎週末の金曜日に彼のマンションに逢瀬に通い、甘い恋に溶け合っている…
『うん、行く』
 そして、いつものようにラインを返す。

 いつもわたしが買い物をして、先に彼のマンションに行き、夕食を作り、二人で食べる…

 そして夜…

「うぅ…ぁ………んん…」
 彼に抱かれ、愛される。

「彩美はいつもピンク色の下着なんだね…」

「うん…そう…わたしピンクが好きなの…
 イチゴみたいでしょう?」

「え、あ、イチゴかぁ…
 うん、そうだね、それにいつも甘い香りがするしね」

「えぇ、そうかなぁ、甘いかなぁ…」

「うん、甘いよ…」
 と、彼はそう囁き抱き締め、キスをしてくる。

「あ...んん…」

 だけど…
 だけど、彼は二回目のセックスはしてはこない…
 いつも一度だけ。
 
 そして…

 いつも淡白で…早い……

 でもいいの…

 わたしは彼が好きだから、ううん、愛しているつもり…
 できれば将来は結婚したい…
 いや…するつもり。

 だってわたしはイチゴ味のシロップ…

 恋に焦がれるイチゴ味…

 そして彼の甘い練乳に溶けて、甘い、ピンク色のイチゴミルクになりたいのだから…



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