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僕の母さん
第7章 母、真弓の憂鬱
図書館の退館時間近くになってデニムの尻ポケットに突っ込んでいるスマホがバイブで震えた。
誰からだろう?
そんなことは確認せずともわかりきっていた。
陰キャラでクラスメートとも仲良くなれない達郎は
連絡先を誰とも交換していなかった。
彼のLINE相手は、今、隣に座っている彩也香と
母の真弓だけであり、彩也香がスマホを弄っていない今、連絡してきたのは母の真弓だと一目瞭然だった。
「母さんからだ…何だろう?」
達郎がスマホを取り出すのと同時に彩也香のバッグに入れてあるスマホも同じようにバイブで着信を伝えていた。
お互いにスマホ画面を覗き込むと、
まるでコピペしたかのように同じ文面が書かれていた。
- 今夜は遅くなるからお弁当でも買って食べておいて -
いつもは夕方きっちりと同じ時間に帰宅してきて夕飯の準備に取りかかってくれる母が珍しいことに帰りが遅くなるという。
「ママ達、どこかへ出掛けるのかしら?」
同じ文面を見て彩也香も怪訝そうな顔をした。
「どうする?ファミレスにでも行く?」
彩也香だって佐智子が帰宅しないのだから
ひとりぼっちになるのは明白なので
達郎は出来るなら一緒に食事をしたいと誘った。
「それならうちに来なさいよ
私、こう見えても料理は得意なのよ
美味しいものを作ってあげるから一緒に食べましょうよ」
出来るだけ彩也香と一緒にいたい達郎にとって
その申し出は願ったり叶ったりであった。
「そうしよう」意見が一致すると、二人は仲良く図書館を後にした。

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