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いまやめないで このままでいて
第7章  第7話  もう離れない 離さないから

 盆明けの月曜日のローカル線は、まだ夏休みの中なので思ったほどには空いていなかったが、山間の川沿いを縫うように走る車窓から美樹也には懐かしい里山の景色が流れていた。

「家では何も言われなかったの?」

「お友達と温泉行くって言ってきたから」

「お友達かぁ…」

 美樹也が苦笑いを見せる。

 途中にいくつも温泉地への玄関口がある路線の車内はロングシートだったが、大小2つのスーツケースにあまり違和感はなかった。

 子供の頃見慣れた秩父とは異なる山並みを見ながらその駅で降りたのは、ふたりを含めて数人しかいなかった。

「真夏だしね…」

「お宿も空いてるといいわね」


 無人駅の改札を出るとホテルの迎えの車が待っていたが、乗ったのは彼らふたりだけだった。

「季節の良い時だと歩いて来られるお客様もいらっしゃいます」

 そう運転手に言われて周りを見ると、眼の前に広がる大きなダム湖に映る緑の山と蒼い空があまりにも眩しくて、ふたりは感嘆の声を上げたが、その声がやまないうちに宿のワゴン車は緑に溶け込む外観の瀟洒なホテルに着いた。



「湖が見えるわ」

 部屋に入ると、大きな窓の外で陽を受けて輝くように広がる水面を見て沙耶が声を上げた。

「ダムでできた湖だね」

「そうなんだ… でもすごくきれい…」

 肩を並べてしばらくの間、ふたりはその銀色の輝きが散りばめられて揺れる様子を見入るようにただ黙って眺めていた。



「さ、お風呂行こうよ」

 それぞれ胸の内にしまってある気持ちの扱いに迷っているようなふたりの間の緊張を払うようにして美樹也が明るく口を開いた。

「うん」

 沙耶も明るい返事をすると、踵を返すように玄関脇に置いたままのスーツケースへ向かった。

 あらかじめ冷やされていた部屋には真夏の午後の陽が差し込んでいた。

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