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いまやめないで このままでいて
第7章 第7話 もう離れない 離さないから
「昔、おにいちゃんと一緒にお風呂入ったの覚えてる?」
「覚えてるよ。 つんつんされたのも」
笑った美樹也に沙耶が湯舟のお湯を掬って顔にかけると、彼は沙耶の胸の蕾を指先で突き返す。
朝一番の貸し切りの半露天風呂からは朝陽を浴びて輝く山の緑が美しかった。
「声が出ちゃうから…」
前夜、もう恥ずかしがるものがなくなったふたりは子供のように湯舟の中で戯れているうちに沙耶はまた彼に愛され、こらえきれない声を吐水口から吐き出される湯の音で消しながら達した。
「LINEつながったから、これからは簡単だね」
成田の出発ロビーを、手をつないでゆっくりとふたりは歩く。
長い間、胸にしまっていた想いをお互いに伝え合い、堰を切ったように愛し合えた沙耶と美樹也の顔は、別れのときを前にしながらも穏やかで明るい表情だった。
「今度はお正月?」
「できれば…」
正月休みのない国にいる美樹也が少し濁す。
「無理ならあたしが行く」
「それもいいかもだね」
沙耶の顔が輝いて見えた。
「じゃあ、行くよ」
イミグレーションの前で指切りをしてふたりは、それぞれその指に小さなキスを交わした。
ゲートを越えた美樹也が、手を振りながら階下へのエスカレータで運ばれて行くのを見えなくなるまで見送った沙耶は、その姿が消えるとLINEを開いた。
>おにいちゃん、だいすき!! だ~いすき!!
(今度ここへ来るときは、きっと一緒に飛行機に乗るときだ)
子供の頃の気持ちのまま、そう固く心に決めた沙耶は、夏休みで賑わう夜の空港をあとにした。
―完―

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