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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第7章 荊棘の視線

昼過ぎの店内には、障子越しに差し込む陽の光だけが広がっていた。
孝幸と高橋は仕入れのために店を空け、鈴木は得意先への配達に出ていた。
月島呉服店には、佐藤周作ただひとり。
「……よしっと」
帳場の帳簿に目を落とすふりをしてから、佐藤は腰を上げた。
白い足袋のまま、階段を軋ませる。重みを消すような、しかし慣れきった足取りだった。
二階の廊下を進み、突き当たりの白い扉の前で立ち止まる。
小さな花飾りが下がったその扉──月島こよみの部屋。
「ただいま〜っと……」
佐藤は、誰に言うでもなく囁きながら、音もなくドアノブを回した。
部屋の中には、昼下がり特有の淡い光が満ちていた。
ピンクのカーテンが揺れ、白く塗られた学習机には、糸巻きと小さな裁縫箱。
花柄の掛け布団、その脇に置かれた白いぬいぐるみが、無言でこちらを見つめている。
「はぁ〜……やっぱ、いい空気してるよねぇ……」
佐藤は和装の裾を軽く持ち上げながら、部屋の中央を横切ると、迷いなくクローゼットの前にしゃがみ込んだ。
軽い音を立てて、戸を開ける。
中には、白やパステル調の衣類が丁寧に吊るされている。
その下──木製の小ぶりなタンス。
ひとつ、引き出しを開ける。
「うんうん……ちゃんと畳んで……えらい、ほんとに」
中には、ジュニアブラやキャミソール、パンツが色ごとに並べられていた。
胸元に裏地のついたブラ、白地にレースのパンツ、水色、薄ピンク……すべてが淡くて、柔らかそうだった。
「社長の趣味だねえ、まったく。……でもまあ、俺も、こういうの好きだけど」
タグをめくるようにサイズを指先で撫で、ふっと笑う。
「お、成長〜……ふふっ」
続けて、佐藤は隣の引き出し──ハンカチ類がしまわれたスペースを開ける。
「あ〜、今日のはどれにしよっかな……」
一枚ずつ、丁寧に開いていく。
花柄、動物柄、レース付き、刺繍入り。どれも小ぶりで、少女らしい布だった。
やがて、淡い水色にうさぎの刺繍が入った一枚を取り出す。
「うん、これだね。今日のは」
孝幸と高橋は仕入れのために店を空け、鈴木は得意先への配達に出ていた。
月島呉服店には、佐藤周作ただひとり。
「……よしっと」
帳場の帳簿に目を落とすふりをしてから、佐藤は腰を上げた。
白い足袋のまま、階段を軋ませる。重みを消すような、しかし慣れきった足取りだった。
二階の廊下を進み、突き当たりの白い扉の前で立ち止まる。
小さな花飾りが下がったその扉──月島こよみの部屋。
「ただいま〜っと……」
佐藤は、誰に言うでもなく囁きながら、音もなくドアノブを回した。
部屋の中には、昼下がり特有の淡い光が満ちていた。
ピンクのカーテンが揺れ、白く塗られた学習机には、糸巻きと小さな裁縫箱。
花柄の掛け布団、その脇に置かれた白いぬいぐるみが、無言でこちらを見つめている。
「はぁ〜……やっぱ、いい空気してるよねぇ……」
佐藤は和装の裾を軽く持ち上げながら、部屋の中央を横切ると、迷いなくクローゼットの前にしゃがみ込んだ。
軽い音を立てて、戸を開ける。
中には、白やパステル調の衣類が丁寧に吊るされている。
その下──木製の小ぶりなタンス。
ひとつ、引き出しを開ける。
「うんうん……ちゃんと畳んで……えらい、ほんとに」
中には、ジュニアブラやキャミソール、パンツが色ごとに並べられていた。
胸元に裏地のついたブラ、白地にレースのパンツ、水色、薄ピンク……すべてが淡くて、柔らかそうだった。
「社長の趣味だねえ、まったく。……でもまあ、俺も、こういうの好きだけど」
タグをめくるようにサイズを指先で撫で、ふっと笑う。
「お、成長〜……ふふっ」
続けて、佐藤は隣の引き出し──ハンカチ類がしまわれたスペースを開ける。
「あ〜、今日のはどれにしよっかな……」
一枚ずつ、丁寧に開いていく。
花柄、動物柄、レース付き、刺繍入り。どれも小ぶりで、少女らしい布だった。
やがて、淡い水色にうさぎの刺繍が入った一枚を取り出す。
「うん、これだね。今日のは」

