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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第7章 荊棘の視線
教室の扉が開く音に、ざわついていた空気がほんの少しだけ収縮した。
入ってきたのは、ジャージ姿の滝本と、体育委員の仕事を終えた司馬だった。

「おお、どうした?みんな集まって仲良いな〜!」

滝本の大きな声が教室に響く。
だがその明るさは、誰の心にも届かなかった。
空気の重さに気づかぬまま、彼は笑顔で教室の中央に進んでいく。

「たきもっちゃん!」
馬場がすかさず声を上げた。強い調子だった。

「男子が黒板に、変なの書いてたんです!」

その声で、滝本の足がぴたりと止まる。
そして黒板を一瞥し、書かれた言葉を見て、ようやく状況を理解したように口をすぼめた。

「おいおい……まじか、これ?」

滝本の視線が岡田と山下に向かう。
だが、責め立てるような色はそこにはなかった。
あくまで苦笑いに近い、それは“男同士の共感”にも似た眼差しだった。

「まあな〜……健全な男子の成長の証拠ってやつか?」
ぽりぽりと頭を掻きながら、滝本は声を張る。

「おーい、日直係、黒板きれいにしとけー!」

その一言で、教室の空気は冷えたまま置き去りにされた。
誰の怒りも、不快も、取りこぼされたまま。

そのとき、司馬が一歩、男子たちの方へ踏み出した。

「お前らさ……そういうの、ほんとにやめろよ。」

声は抑えられていたが、言葉には熱があった。
普段は明るくて、冗談ばかりの司馬が、真剣な顔をしていた。

「書かれた方の気持ち、考えたことあんのか?」

岡田と山下は言葉を失い、目を逸らす。
その沈黙が、教室の隅まで伝わっていく。

黒板を見ていた女子たちは、少しだけ視線を下ろした。
佳乃がこよみの肩に手を添える。
けれどこよみは、ただ静かに俯いたまま、何も言わなかった。

後ろの席で、山下がぽつりとつぶやいた。
「……月島のことが好きなだけのくせに。」

声は、司馬にもこよみにも届いていなかった。
けれど、彼のその横顔は、少しだけ照れくさそうで、バツが悪そうだった。
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