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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第6章 答え合わせ
日が短くなり始めた通学路を、赤や黒のランドセルの群れが揺れながら歩いていく。

こよみは佳乃、司馬と並んで歩いていた。誰も、視聴覚室で見たビデオの話には触れない。けれど沈黙が気まずいわけでもなく、司馬がいつもの調子でアニメの話を持ち出して、はぐらかすように笑いを誘った。

「あのさ、昨日のスパークイレブン見た?アツいよな、エースストライカーがさ……」

なにごともなかったかのように通学路の時間が流れていく。

やがて、三人の足は商店街へと差しかかった。

「こよみちゃん、今日も晩ごはんつくるの?」と佳乃が聞く。

こよみは少しだけ考えてから、ぽつりと答えた。

「うん。今日は……さんまの塩焼きにしようかな」

「え!? 月島って毎日料理してんの? すげーな」

司馬が目をまるくして言うと、こよみはほんの少し照れたように笑った。

「……簡単だよ。焼くだけだし」

そのやりとりを、商店街の一角から見つめる視線があった。石田ベーカリーの店先に立っていた奥さんが、ほほえましげに三人の姿を目で追っていた。

帰宅後、こよみは商店街で食材を買いそろえ、エコバッグを肩にかけて店を後にした。

台所に立つと、エプロンをかけて動きはじめる。
ほぐしたしめじと人参を炊飯器に入れ、魚焼きグリルでは、秋刀魚がじりじりと焼けている。ほうれん草はさっと湯がいてごま和えに。小鍋ではさつまいもを甘く煮て、味噌汁にはなすと油揚げを加えた。

夕食の支度が整う頃、商店街では石田ベーカリーがちょうどシャッターを下ろし始めていた。そこへ孝幸が通りかかる。

「あら、月島さん。おつかれさまです」

奥さんが笑顔で声をかけた。

「うちの前をね、こよみちゃんが通っていったの。女の子と、男の子と、三人で仲良さそうに帰ってたわよ。にこにこしてて、楽しそうだったわ」

「そうですか」

孝幸は一瞬だけ動きを止めた。その表情が、かすかに揺れた気がした。けれどすぐに、にこりと人当たりのいい笑顔を浮かべる。

「こよみも、もう五年生ですからね。友達と帰れるようになったのは、嬉しいことです」

「そうねえ。おうちのことも、ちゃんと手伝ってるし。ほんとに、できた娘さんね」

奥さんの言葉に、孝幸は「ありがとうございます」と軽く頭を下げた。けれど、その目の奥にある光は、誰にも読み取れなかった。
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