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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第6章 答え合わせ
視聴覚室を出た廊下に、なんとも言えない空気が漂っていた。
少し気まずさを帯びたざわめきと、なんでもないふりをしようとする気配が、列のなかを流れていく。

佳乃と並んで歩くこよみは、無言のままだった。
けれど、その指先はわずかに揺れて、かすかに互いの手の甲に触れていた。

「おーい、後ろの人、戸締まり確認しろよー」

滝本先生の声が響くと、子どもたちの背筋が少しだけ伸びた。

教室に戻ると、男子の一部が早速そわそわと騒ぎ出した。

「マジかよ、生理ってさぁ……血が出んの?」
「コンドームとかさ、マジで映すなよって感じ~」

岡田がニヤニヤしながら声を上げる。
その隣で、山下が「避妊って言葉がさぁ」と笑いながら手でなにかを形づくると、周囲の男子がどっと笑った。

「誰がもう“なってる”と思う?」
「絶対、あいつだろー」

別のグループの男子が、ふざけ半分に女子の名前を挙げては笑い合う。
まるでクイズ番組の解答者にでもなったかのように、無邪気に“推測”を続けていた。

「やめろよ、そういうの」

司馬の声がした。
笑い声が一瞬だけ止まり、けれどすぐに別の声がかき消した。

「なにマジになってんの」
「おまえこそ気にしてんじゃねーの?」

男子の笑い声にかぶせるように、馬場が声を張った。

「そういうの最低。ふざけるのやめなよ」

けれど、その言葉さえも「だってさー」と軽く受け流され、教室の空気はまたざわつきにもどっていく。

帰りの時間、こよみはそっとランドセルの端をつまむ。
言葉を出せるほど心が動いていない。けれど、何かを確かめるように、その布の感触を指先で探っていた。

ふと、視線を感じて顔を上げると、司馬がこちらを見ていた。

まっすぐではない。でも、ただの偶然でもない。
その視線にこよみは戸惑い、すぐにまた目を伏せた。

視聴覚室で見た映像。
聞いたことのある単語。
けれど、それが「父の行為」と同じ意味を持つと知ったとき、こよみの胸に重く、つめたい何かが落ちた。

あれは、こどもを作る行為。
“好きな人とするもの”と説明されたそれを、父は毎晩、わたしに――

気づきたくなかった。
でも、もう知らないふりはできなかった。

こよみの中では、「知っていること」と「知らないこと」が、静かに混ざっていった。
それは、声にはならないまま、心の奥で音を立てていた。
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