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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第5章 初花

風呂の支度を終えたこよみは、タオルを手にトイレへ向かった。
湯上がりに使うナプキンを、そこに取りに行くつもりだった。
便座の横に置かれた、小さなダンボール箱。
そこには、自分で買ったばかりの生理用品をひっそりと詰めていた。
けれど今、それは見慣れない白い編み籠に置き換わっていた。
中身は整理され、箱の時よりずっと“整って”いる。
その中には、自分が買っていない――新しいナプキンの束が足されていた。
驚いたこよみが、その隣のカレンダーに目をやる。
一つの日付に、小さく「×」の印が書かれていた。
――それは、こよみに初潮が来た日と、ぴたりと一致していた。
指先が冷たくなった。
誰が。いつ。何のために。
それを問いただす声は、胸の奥で溶けたまま、表に出てこなかった。
その数日後、こよみの生理が終わった夜。
風呂から上がったその足で、部屋へ戻ろうとすると――
静かに、背後から父の声がかかった。
「こよみ」
ふり返った先には、薄暗い廊下の奥。
浴衣姿の孝幸が、灯の下で腕を組んで立っていた。
「身体、冷えてないか?」
こよみは、濡れた髪を肩に残したまま、無言で頷いた。
「そうか。済んだら俺の部屋に来い」
それは数日ぶりの、父からの誘いだった。
いつものように、父の部屋の襖を開ける。
灯りはすでに絞られていて、畳の匂いだけが落ち着いて漂っていた。
その夜の孝幸は、いつもよりも声が優しく、触れる手が丁寧だった。
髪をなで、肩を抱き、布越しに胸元へ手を置いた。
「……ふくらんできたな。こよみも、もう……女の子だ」
その言葉に、身体が少しだけすくんだ。
「今度の休みに、新しい下着を買いに行こう。父さんがついていってやるからな」
それが提案なのか、決定なのか――こよみにはわからなかった。
けれど、頷く以外の選択肢は、最初からそこにはなかった。
湯上がりに使うナプキンを、そこに取りに行くつもりだった。
便座の横に置かれた、小さなダンボール箱。
そこには、自分で買ったばかりの生理用品をひっそりと詰めていた。
けれど今、それは見慣れない白い編み籠に置き換わっていた。
中身は整理され、箱の時よりずっと“整って”いる。
その中には、自分が買っていない――新しいナプキンの束が足されていた。
驚いたこよみが、その隣のカレンダーに目をやる。
一つの日付に、小さく「×」の印が書かれていた。
――それは、こよみに初潮が来た日と、ぴたりと一致していた。
指先が冷たくなった。
誰が。いつ。何のために。
それを問いただす声は、胸の奥で溶けたまま、表に出てこなかった。
その数日後、こよみの生理が終わった夜。
風呂から上がったその足で、部屋へ戻ろうとすると――
静かに、背後から父の声がかかった。
「こよみ」
ふり返った先には、薄暗い廊下の奥。
浴衣姿の孝幸が、灯の下で腕を組んで立っていた。
「身体、冷えてないか?」
こよみは、濡れた髪を肩に残したまま、無言で頷いた。
「そうか。済んだら俺の部屋に来い」
それは数日ぶりの、父からの誘いだった。
いつものように、父の部屋の襖を開ける。
灯りはすでに絞られていて、畳の匂いだけが落ち着いて漂っていた。
その夜の孝幸は、いつもよりも声が優しく、触れる手が丁寧だった。
髪をなで、肩を抱き、布越しに胸元へ手を置いた。
「……ふくらんできたな。こよみも、もう……女の子だ」
その言葉に、身体が少しだけすくんだ。
「今度の休みに、新しい下着を買いに行こう。父さんがついていってやるからな」
それが提案なのか、決定なのか――こよみにはわからなかった。
けれど、頷く以外の選択肢は、最初からそこにはなかった。

