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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第5章 初花
午後の授業が始まり、プールの時間が近づいてくる。
教室に置いた籠から水着セットを取ると、こよみはゆっくりと更衣室へ向かった。

友達に背を向けながら着替える。前より胸元を隠すようになっていることに、自分でも気づく。
水着の上からも、すこしだけ膨らんだ部分が目立つ気がして、タオルを肩にかけたまま着替えを終えた。

プールは夏の光をそのまま閉じ込めたような熱気の中にあった。
冷たい水に足を浸すと、こよみは小さく息を吸った。
そのままバタ足の練習、水中歩行、背泳ぎ――淡々と時間が流れていく。

けれど、いつもと少しだけ、違っていた。
お腹の奥が重く、足が妙にだるかった。

気のせいだと思い込もうとしていたその時だった。
こよみは、泳ぎ終えた後、プールサイドでふと脚に視線を落とした。

水の粒と一緒に、太ももを一本の赤い線が伝っていた。

「……え」

思考が止まった。
けれど、誰よりも早くその異変に気づいたのは、隣で泳いでいた佳乃だった。

「こよみちゃん……ちょっと、トイレ行こっか」

声はとても静かで、でも確かな力があった。
こよみは頷くことしかできなかった。

更衣室の外へ出て、タオルを身体に巻いたまま、二人で並んで歩く。
そのとき、すれ違いざまに滝本が声をかけてきた。

「おっ?どうした、そんな顔して。漏れそうなのか〜?」

軽口のつもりなのだろう。
こよみは何も言わずに目を伏せ、歩みを早めた。
滝本の笑い声だけが、廊下の奥に取り残される。

トイレの個室に入ると、こよみは水着を脱いだ。
太ももには、はっきりと血の筋が残っている。

「……わたし、これ……」

言葉にならない。喉が詰まり、涙がにじみそうになる。

すると、個室の外から、ポーチを差し出す佳乃の手が見えた。

「これ、使って。大丈夫だからね」

手のひらに乗った小さな包みは、温かかった。
こよみは、ただ静かに頷いた。

しばらくして、こよみは少しだけ目を伏せたままトイレを出た。
その間、佳乃はなにも言わずに待ってくれていた。

並んで歩く足音が、トイレのタイルに小さく響く。
プールのざわめきが、遠くの出来事のように思えた。

そのとき、こよみの頭の中に、佳乃の声がふっと浮かんだ。

「大丈夫だよ」

その言葉だけが、まるで水面に残る波紋のように、心の中にぽつんと残っていた。
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