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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第11章 月下美人のデカダンス
裕樹が足を運ぶたびに、床板がぎし、と湿った音を立てる。

小屋の中央に置かれた三脚のそばまで来ると、上部の窓から差し込む薄明かりで、互いの姿がはっきりと見えた。

裕樹の視線の先に、葵は生まれた姿のまま無防備に立っていた。

その姿は砂時計のような完璧なプロポーションで、街灯の光を反射して、白く輝いて美しく、見惚れてしまう。

葵は何気ない様子で三脚に近づき、セッティングされているスマホを確かめる。

「電池切れちゃってる…」と一瞬、肩を落とした。

その素っ気ない声と仕草は、先ほどまで熱烈に絡み合った面影を感じないほど、自然な動作だった。

だが、葵を見つめるほど、その身体の細部が目に止まってしまう。

普段のさらさらの黒髪は、汗で湿って毛先がゆるくカールしていた。

背中や腰は、壁に押し付けた時の土埃や泥がついていて、触れ合った跡が生々しく残っていた。

自然で無防備な美しい佇まいの中に孕む、退廃的な官能が裕樹の中の理性を再び焦がしていった。

「…っ」

無意識に漏れた浅い吐息に、裕樹自身が戸惑いを覚える。

欲棒はいつの間にか芯の硬さを取り戻し、意識とは無関係に昂ぶっていく。

どうしようもないな──裕樹は、下半身が別の生き物に支配されていると錯覚するほどの、男の性に戸惑いと呆れさえ感じていた。

隠さないと──そう思ったその刹那、息が詰まり、気づけば葵と視線がぶつかっていた。
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