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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第10章 雷雨に綻ぶインモラル
少しだけ扉を開くと、外は雨粒が地面を叩きつけるような土砂降りで、閃光と激しい雷鳴が空気を揺らした。

冷たい風が小屋に吹き込み、湿った空気を掻き回す。

蒸し返すような熱気を押し退けて、空気の膜が全身を包み込むように裕樹の肌を撫でていく。

新鮮な風に一瞬の心地良さを覚えながら、裕樹は雨に沈む公園を見渡すが、そこに人影はどこにもなかった。

プレーパークの小屋は雨風こそ凌げるが、屋外にいるのと大差はない。

常ならば、互いの家か、あるいはホテルを選んだのだろう。

だが葵とも、家に上がり込むような間柄ではなかった。

ホテルは金もかかれば、年齢的に入れる保証もない。

そうした現実を秤にかけ、裕樹はこの場所を選んだ。

これは、明らかに普通ではない────

裕樹は俯瞰した意識の中で、この空間の異様さと退廃的な何かを察していた。

そして今、裕樹も葵も生まれたままの姿でここにいる。

少しだけ空いていた扉を完全に開け放つと、背筋を這い上がるようなゾクゾクとした感触に、裕樹の体は震えた。

それは寒さによる震えではない。

(外で裸になっているこの状況…すごく興奮する…)

誰かが通りかかったら、一瞬で露見してしまう。

危うさと隣り合わせの背徳の予感が、裕樹の胸を熱くする。

ふと葵を見ると、バスタオルの上に腰を落として、両膝を花弁のように左右に崩していた。

力なく身を預けた姿の無防備さと妖艶なシルエットが、裕樹の欲望を綻ばせた。
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