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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第10章 雷雨に綻ぶインモラル
葵にかけていた体重を抜いて、腕をついてゆっくりと上体を起こした。

抱きしめていて、顔を見ていなかった葵を改めて見つめる。

髪は汗ばんだ肌に貼り付き、額にじんわりと汗が滲んでいる。

熱の余韻があって、僅かに蕩けているが、裕樹をまっすぐ見つめる瞳だった。

裕樹も目を逸らさず、瞳の奥を覗き込む。

お互いが見つめ合う時間が少しだけ流れて、ふいに葵は顔を背けた。

髪が揺れて、肩が僅かに動く。

その横側は何も語らなかったが、拒絶するわけではなく、何かを隠すような、そんな気配があった。

裕樹は名残惜しさを胸に感じつつ、ゆっくりと腰を引いた。

結ばれた紐が、静かに解けるように───ひとつだった身体はふたつに還っていく。

先端からぶら下がるゴムは、裕樹の興奮を視覚化したように白濁液を溜め込んでいた。

息を整えて、ついていたそれを外す。

リュックからティッシュを数枚取り出して、葵に渡す。

葵はぐったりとした身体を起こすこともせず、横たわったまま裕樹の差し出したティッシュを受け取った。

焦点の合わない瞳に、まだ快楽の余韻が滲んでいる。

汗と体液でむせ返る小屋の空気が、二人の肌にまとわりつく。

汗が額と背中を伝い、裕樹は小屋の空気がこもっているのを悟った。

「ちょっと暑いよね。」

そう言って裕樹は立ち上がり、軋む音を立てながら扉を開いた。
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