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わたしの妄想日誌
第15章 里帰り
 「お父ちゃんはどこにいるの?」
 「まあだ、ギックリが治り切ってない言うてな」

 今日も整体師のところに行っているそうです。整体師というのは母と同じくらいの女の人なのですが、母は気にする風でもありません。

 「長引いてるのね。月に一回くらい通ってるの?」
 「そうやね。それぐらい通うてるわね」

 母が答えると、台所で野菜を切っている姉の声がしました。

 「月イチじゃきかんよ。週イチとは言わんけど、まあ、二週に一度は通うてるわ。治しに行っているのか悪うしに行ってるのかわからんわね」

 (二週に一度か…)

 わたしは、自分の『頻度』を思い出していました。そして、思わぬところで父との共通点が見つかったと思いながら、卓袱台の湯呑を口に運びました。

 「年末だというのにお盛んなことやわ」

 姉もエプロンで手をふきながら卓袱台の前に座りました。

 「あ、”△△△”≪お土産のお菓子の名前≫がある。これがあるとあんたが帰って来たって感じがするなぁ」

 そう言って姉が菓子を頬張りました。

 「うん、美味しい。ねっとりしたあんこがええのよね…。いつまでも舌にまとわりついてくるわ」
 「お母ちゃん、ちゃんと隠しとかんとお父ちゃんに食べられてしまうで」
 「そうやね」
 「いや、今日は帰って来んわ、きっと。明日も泊ってくるかもしれんね」
 「そうかもしれんね」

 母は昔から、父の行状にはおおらかでした。わたしが子どもの頃も、父が夜遅く帰った翌朝、朝食の席で姉が何か言いかけると、母はいつも『まあ、ええがね』と笑ってその場を収めていました。怒るでもなく、疑うでもなく、ただ淡々と受け入れているような感じでした。

 いま思えば、あれは諦めでも忍耐でもなく、もっと別の種類の“距離の取り方”だったのかもしれないと思えます。この土地の人たちがしばしば身につける、他人にも自分にも踏み込みすぎないための、ゆるい知恵のようなもの。

 母が自分の夫の動きを必要以上に気にしないのも、そういうことなのでしょう。そして、わたしも年を重ねるごとに、それまで勝手に抱いてきた「父に従順な母」という印象が、実はずれていたのだと思ったのでした。

 「婦人会じゃあ、また昔話に花が咲くやろうね?」
 「そうかもしれんね」
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