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わたしの妄想日誌
第15章 里帰り
 家には姉も帰っていました。母が卓袱台に並べた3つの湯呑にお茶を淹れながら言いました。

 「明日は婦人会があるから、大して構いもできんで済まないね」
 「いいわよ。姉ちゃんと家でのんびりさせてもらうわ。お母ちゃんもたまには羽根を伸ばさないとね」

 一昨日に上司から言われたようなことを言ってしまって、わたしは心の中で苦笑しました。

 「今年も集会所でやるの? 明日は遅くなるんでしょ?」

 わたしが訊くと、母は薄く笑って言いました。

 「そうかもしれんね」

 『婦人会』は、集落の四十を超えた女性たちの集まりで、「ひまわり会」だったか「コスモス会」だったか、そんなような名前もあるはずですが、母はいつも『婦人会』と呼んでいます。

 「婦人会があるんだったらもう一箱買ってきてもよかったわね。去年もそんなこと思ってたのにすっかり忘れちゃってた」
 「なに、二つ、三つもありゃあ義理は済むわよ」

 この辺の集落の人たちは一つの家族のような付き合いをしていて、親の世代くらいまでは夜這いの風習もまだ残っていたそうです。性に大らかな土地柄だったようで、自分の妻が妊娠したり出産を迎えたりして夫婦の営みができないときは、妻のかわりに性行為の相手を務めたりすることもあったそうです。

 そのような土地柄のせいなのか、姉が言うには、婦人会の集まりでは、いわゆる“男女の仲”のような話が今でもあけすけに語られるのだそうです。それだけでなく、女たちが”男女の仲”を営むために家を空ける口実として婦人会が開かれるという意味合いもあるようでした。

 今はどうなのか、わたしにはわかりませんが、夜這いこそ行われなくなっても、夫や妻以外に『セックスフレンド』を持っていたり、特に仲の良い夫婦同士では、いわゆる夫婦交換をたのしんでいたりもしているようでした。
 
 わたしは二人姉妹の妹で、姉は父親似、わたしは母親似でした。母のお腹から産まれたことは確かですから、姉もわたしも母の子であることは間違いはありません。

 ですが、父親似の姉はまだしも、母親にしか似ていないわたしの父親は、もしかしたら父ではないのかもしれないなんて思ったこともありました。そう言えば、父の姿は見当たりません。
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