この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
わたしの妄想日誌
第13章 承認欲求
駅までの道が、まるで別の町のように思えました。□□駅で電車を降り、改札を抜けると、知っているはずの□□駅とは違う遠い場所に来たような気分になりました。時計を見ると、まだ約束の十分前でした。
(先に着いてしまった…)
改札の脇で立ち止まり、落ち着かない気持ちのまま周囲を見回したそのとき…男性がわたしの姿に気づき、ゆっくりと歩み寄ってきました。
「奥さん…早かったですね。来てくださって…本当にうれしいです」
わたしは小さくうつむきました。
「では、行きましょうか。少し歩いたところに、落ち着ける場所があります。…ゆっくりできます」
“ゆっくりできます”というその言葉を飲み込むように、わたしは無言で頷きました。駅から商店街を抜けると△△さんが路地に入っていきました。わたしも黙ってついていきました。△△さんが、足を止めました。
「こちらで…よろしいですか?」
古びた木造の建物。入口に手書き風の文字で「休憩 一時間 ○○○円」とだけ書かれた紙が貼られています。俗に云う連れ込み旅館でした。わたしは黙って頷きました。部屋に通されると、畳の上にはすでに布団が一組敷かれていました。
「私も分別はあるつもりです。奥さんにはご迷惑をおかけするようなことはありません」
「はい…美容室のママさんが『後腐れがない』って」
「そうです。そういうことです」
△△さんが笑いました。そしてわたしを抱きしめてくれました。
「奥さん、素敵です…」
「そんなことありません…」
「ご主人はお忙し過ぎて、あなたのすばらしさを見失っているだけですよ。こうして奥さんと一緒になれるなんて…私は幸せです。いつまでもこうしていたい…。つながっていたい…」
△△さんがそっと髪を指先で整えてくれます。
「わたしもです…幸せ…」
「ああ…でも、奥さんがよすぎる…じっとしていることが難しくなってきました。…そろそろ…よろしいですか…」
わたしは枕元のお盆に置かれていた小さな包みを△△さんに渡しました。△△さんが体を離すと包みの封を切って装着しました。
「どうぞ…いらしてください…」
わたしは自然に身体を開いてふたたび△△さんを迎えました。この人はわたしの中で果てようとしてくれている…。
日も傾く頃、わたしは旅館を出ました。承認欲求を存分に満たされて。
(先に着いてしまった…)
改札の脇で立ち止まり、落ち着かない気持ちのまま周囲を見回したそのとき…男性がわたしの姿に気づき、ゆっくりと歩み寄ってきました。
「奥さん…早かったですね。来てくださって…本当にうれしいです」
わたしは小さくうつむきました。
「では、行きましょうか。少し歩いたところに、落ち着ける場所があります。…ゆっくりできます」
“ゆっくりできます”というその言葉を飲み込むように、わたしは無言で頷きました。駅から商店街を抜けると△△さんが路地に入っていきました。わたしも黙ってついていきました。△△さんが、足を止めました。
「こちらで…よろしいですか?」
古びた木造の建物。入口に手書き風の文字で「休憩 一時間 ○○○円」とだけ書かれた紙が貼られています。俗に云う連れ込み旅館でした。わたしは黙って頷きました。部屋に通されると、畳の上にはすでに布団が一組敷かれていました。
「私も分別はあるつもりです。奥さんにはご迷惑をおかけするようなことはありません」
「はい…美容室のママさんが『後腐れがない』って」
「そうです。そういうことです」
△△さんが笑いました。そしてわたしを抱きしめてくれました。
「奥さん、素敵です…」
「そんなことありません…」
「ご主人はお忙し過ぎて、あなたのすばらしさを見失っているだけですよ。こうして奥さんと一緒になれるなんて…私は幸せです。いつまでもこうしていたい…。つながっていたい…」
△△さんがそっと髪を指先で整えてくれます。
「わたしもです…幸せ…」
「ああ…でも、奥さんがよすぎる…じっとしていることが難しくなってきました。…そろそろ…よろしいですか…」
わたしは枕元のお盆に置かれていた小さな包みを△△さんに渡しました。△△さんが体を離すと包みの封を切って装着しました。
「どうぞ…いらしてください…」
わたしは自然に身体を開いてふたたび△△さんを迎えました。この人はわたしの中で果てようとしてくれている…。
日も傾く頃、わたしは旅館を出ました。承認欲求を存分に満たされて。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


