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わたしの妄想日誌
第9章 秘密基地
 『ここぞというとき』ってどういうときなのかしら。そういうときって、逆に我慢したりするものではないのかしらね。

 「あの秘密基地をつぶしてできた分譲団地で奥さんを見たときには、初めて会ったような気がしなくてな。どうしてだろうと思っていたところに、会長に雑誌を見せられてやっとわかったんだよ」
 「そうそう。『秘色』なんていう名前は忘れちまってたけど、『秘色』の女によく似ていたからだってな。会長なんか『あの奥さん、『秘色』から抜け出てきたんじゃないか』なんて、真顔で呟いたりしてたもんな」
 「バカ、真顔じゃ呟いてねえよ。まあ、観音様への信心がよかったからとは思わなくもなかったがね」

 熱を帯びてくる男3人。わたしも皆さんとこうしていろいろお話もできる間柄になれたことを思えば、『秘色』の女の人に似ていてよかったと思う。

 「そんな思い出があったんですね…。わたしにも一度、『秘色』を拝見させていただけますか?」

 わたしは皆さんの秘密基地の思い出を彩っている雑誌がどのようなものか見たくなった。

 「まあ、こんな内容ですよ。月に一度の観音様の御開帳。雑誌で見るよりやっぱり生身のオンナのほうがいいに決まってる」
 「そうそう。無粋な墨塗りもないしな。奥さんが御開帳してくださっている”秘色”はほんとにいい色づき具合だ」
 「無事、役員も決まって、奥さんの俺たちの秘密基地への出入りはこれからも自由ですからね。じゃ、みんなもよろしく頼みますよ。お先に…」

 わたしが指で開いていたところに会長がずぶずぶと入ってきた。わたしの秘密の場所への皆さんの出入りもこれからも自由です。よろしくお願いします…。
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