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わたしの妄想日誌
第9章 秘密基地
 わたしは黙って、ノートに今日の会合の内容をメモしながら、和やかな気持ちになっていた。

 「”秘密基地ごっこ”って、男子だけの遊びでしたよね。一緒に遊びたいと言っても、絶対入れてくれませんでした」

 わたしが、子供の頃の思い出を話す。目の前の3人が顔を見合わせて、にやりと笑った。

 「そりゃそうだよね」
 「いろいろ隠していたからね」
 「そうそう。女人禁制」
 
 わたしも何となくの察しは付く。土管やタイヤが無造作に置かれた空き地の一角の掘立小屋。波とたんの板で四方を囲い、外から中が見えないようにしてある。男子は放課後になるとそこに集まって、何やらこそこそ、ごそごそしていた。

 「“秘密基地”って、男の子の秘密が隠されてるから“秘密基地”って言うんでしょう?」

 わたしがそう言うと、男性たちは一瞬、バツが悪そうに目を見合わせ、それからそろって苦笑いした。

 「まあ……否定はできないな」
 「大した秘密じゃなかったけどな、今思えば」
 「でも、あの頃はあれがすごく大事だったんだよな」

 誰かがぽつりとそう言うと、しばらくのあいだ、誰も言葉を発さなかった。集会所の天井から、ぽたぽたと雨漏りの音が続いている。

 「そうそう、まあ、そんなもんだ。さすが、新住民の奥さんは勘が鋭いね」
 「いろいろ、いっぱい溜め込んでたもんな。いちばん年下の俺が、毎回拾いに行かされてさ」
 「ははっ。まあ、そんときは悪かったよ。いつまでも恨み言言うなって」

 畳の上に座って、湯呑みを手にしながら、男性たちはまるで昨日のことのように昔話を始める。

 「皆さんの秘密基地ってどの辺にあったんですか?」

 雨は上がって日が差してきたが、雨漏りはまだ続いている。わたしは、カーテンを締めながら尋ねる。

 「ちょうどいまの団地のあたりだよな」
 「観音さんの二股から雑木林に抜けるあたりだもんな」
 「そうそう。それこそ奥さんの家のあたりじゃないか?」

 『観音さん』は今も二股に分かれた道の脇に、そっと佇んでいて、優しそうなお顔立ちで心を和ませてくれる。昔、あのあたりは雑木林だったという。けれど分譲団地が造成され、林は姿を消し、道も広げられた。
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