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わたしの妄想日誌
第9章 秘密基地
 わたしは分譲団地に住む主婦。この町内に越してきて、もう10年。子供にも手がかからなくなったころ、「なり手がいないから」と町内会の会長に頼み込まれ、断り切れずに役員を引き受けてしまった。それから早くも3年が経つ。

 町内会の仕事は想像以上に忙しく、頻繁に会合が催される。現在、役員を務めているのは、60歳前後の男性3人と、わたし一人。

 男性3人は、古くからの幼馴染だそうで、とても仲が良い。最初は、年配の男性たちの中でやっていけるか不安だったけれど、みんな気さくで、わたしにも優しくしてくれる。思っていたよりずっと、居心地がいい。

 会合が開かれるのは、みんなが「集会所」と呼んでいる、古びた平屋の小さな建物。あまりに古くて、雨が降るたびにあちこちから雨漏りがするほどだ。

 今日も朝から雨。天井からはぽたぽたと水が滴り落ち、すっかり青みを失った畳の上に、小さな金だらいがぽつんと置かれている。

 町内会の会合も終わり、役員のわたしたち4人だけが集会所に残っている。

 今日の議題は、今年度の役員をどうするか、ということだった。けれど、話し合いはあっけないほどに終わり、結局、いまの4人が引き続き務めることに決まった。

 それが、わたしにはうれしかった。今年もまた、この4人で、こうしてたびたび顔を合わせることができるのだと思うと、自然と気持ちが和らいでくる。

 書記役のわたしは、会の資料をめくりながら、今日決まったことをノートにまとめている。古い畳に膝をつき、鉛筆で書きつけるたびに、静かな時間が少しずつ積み重なっていく。

 「それにしても、金も溜まってきたね。分譲団地ができてから、会員も増えたからな」

 「集会所の建て替えも、そろそろ考えるべきという意見も出るかと思っていたんだが、今日はそんな意見も出ず、まずは平穏無事に終わってよかったよ」

 「俺はこの集会所の雰囲気が捨てがたくてね。まあ、雨漏りくらいは修繕しておこうか」

 男性3人に言わせれば、この集会所は、子どもの頃の“秘密基地”のようなものなのだという。

 たしかに古びているし、畳も色あせてしまっている。でも、彼らにとっては、ただの建物ではないのだろう。思い出が染み込んだ場所を、簡単に壊すわけにはいかない…そんな思いが、言葉の端々ににじんでいた。
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