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大きなクリの木の下で
第16章 エピローグ

お茶を用意して和室の廊下まで来ていたのだろう。
「ちょっと来なさい」と飯沢が妻を呼ぶと
すぐ近くの障子の向こうから「お呼びですか?」と返答があった。
「お茶なんか後でいい!
とにかく隣に座んなさい」
威厳を保とうとしているのだろうけど、
その顔は嬉しくてたまらないと言うようにデレデレしていた。
「はい、何でしょうか?」
障子の向こうで仲人の件が聞こえていたはずだが、
礼子は再度、若い二人から仲人の依頼を聞きたくて正面の二人を見据えた。
「もう一度、お願いを申します
ぜひ、僕たちの仲人を引き受けてくださいませんか?」
竹本が飯沢夫妻の顔を交互に見つめながら
再度のお願いを申し出て頭を下げた。
入籍はまだだが、すでに夫婦として成り立っているかのように
同じタイミングで静香も頭を下げた。
「まあ!私たちでよろしいんですの?」
夫人は飛び上がらんばかりに喜んだ。
「では引き受けていただけるのですね?」
「もちろん、私たちには断る理由なんてないからね」
その後、四人でしばしの雑談して竹本と静香は部長宅を後にすることにした。
部長宅から今度は、美代子のマンションを訪れた。
彼女もまた、施設を無事に退院して自宅に戻っていた。
インターホンを鳴らすと「あら!静香ぁ~、来てくれたのね?」とドアを開けてくれた。
竹本は彼女から死角になるところで待った。
男性恐怖症は完治せず、男性と出会うとまだまだ取り乱してしまうのだった。

