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大きなクリの木の下で
第16章 エピローグ

優しく彼女の手をほどくと、
竹本は立ち上がって静香の正面に立ち、片ひざを付いてしゃがみこんだ。

「どうしたの?」

竹本はポケットからリングボックスを取り出すと蓋を開いて静香に差し出した。
中には小さいながらもダイヤが付いているリングが入っていた。

「今さらだけど…僕と結婚してください」

「ホントに今さらだわ、お腹にはあなたの子供がいて、挙式の日取りも決まってるっていうのに」

順番がバラバラだわと静香はクスクス笑った。

「なし崩しに今まで来たけれど、ちゃんと言っておきたかったんだ」

「ホントにおバカなんだから…」

笑顔を見せながらも静香は涙ぐんで左手を差し出した。

「ありがとう…ちゃんと言ってくれて嬉しい」

「絶対に君もお腹の中の子供も幸せにして見せます」

そう言いながら、竹本はリングを静香の左手にハメた。

「ねえ、あなた…こんな栗の花の匂いじゃなく、あなたの本当の香りが欲しいわ」

「ああ、帰ろう、久々に君を抱きたくなった」

竹本は静香を労るように肩を抱きながら帰路についた。


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