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大きなクリの木の下で
第14章 竹本伸和の正体

「あなたの出生の事は理解したわ…
あと、うちの部長が社主に提出したレポートって…」
「あれは俺の行動記録みたいなもんさ
ほら、俺は一つの部署に長居しないだろう?
あれは、俺が出版社の全てを把握しておきたいから、あっちこっちの仕事を経験させてくれと親父に頼んだんだよ…
妾の子といえども、俺が唯一の後継者なんだから親父の会社のいろんな部署を見て回りたかったのさ」
だから、その都度、面倒を見てくれているその時の部長が親父に俺の事を逐一報告することになってたみたいなんだ。
「だからって私とあなたが…その…デキているなんて憶測で報告するなんて、うちの部長も早とちりもいいとこだわ」
「早とちりかい?」
「えっ?だって…私まだあなたから告白されていないもの」
「じゃあ、正式に申し込むよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「どうして?俺たち相思相愛だろ?違うのかい?」
「そうじゃなくて…その、なんていうか、じゃあこの際コクっておこうかじゃムードもへったくれもないわ」
「あ、そうか…悪い…
俺、そういうのにぜんぜん疎くて…」
ちょっと待ってと言いながらも、
静香は深呼吸して彼からの告白の言葉を待ち望んでいた。
「いいわ…コクって…」
「よ、よし、言うからね…
一度だけだから…聞き逃すなよ」
竹本はなんとかベッドから降りて、静香と向き合った。
そして、いざ告白しようとしたその瞬間、病室のドアがコンコンとノックされた。

