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大きなクリの木の下で
第14章 竹本伸和の正体

「よかった…来てくれたんだね?」
「ごめんなさい、色々と忙しくて…」
体調を崩して自分も入院していたこと、警察に連れられて美代子を訪ねたこと、その時の若い刑事に抱かれてしまったこと…
そういうことを全てひっくるめて忙しかったからと一言で済ませた。
竹本には知られたくない事だったし、
余計な心配を彼に押し付けたくはなかった。
「静香…」
竹本は静香のそばに近づこうと足を踏み出した。
だが、歩行に難のある彼の足はよろめいて転びそうになる。
「危ない!」
静香が咄嗟に竹本を抱きかかえた。
そのまま「あなたに会いたかった」と介助ではなく、しっかりと彼を抱き締めた。
そのタイミングで「電話、もう終わったかしら?」とナースの大沢が談話室にやって来た。
「あら?」抱き合う竹本と静香を確認すると「おあとがよろしいようで」と落語家みたいに呟くと、邪魔しちゃいけないとゆっくりと談話室を出ていった。
「君に会いたくてたまらなかった」
「ごめんなさい…」
いつ誰が談話室に来るかもしれないのに、
そんなことを気にせず、二人は熱い接吻を交わした。
数々の女と交わしたどのキスよりも静香とのキスは脳を溶かすような甘美な口付けだった。

