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大きなクリの木の下で
第14章 竹本伸和の正体

- わかった、こちらから雨宮くんに状況を確認してみるよ -
「すいません、よろしくお願いします」
通話が切れた後も竹本は受話器を握りしめて呆然となっていた。
もう少しまともに歩けるのなら
今すぐにでも病院を抜け出して静香のマンションに駆けつけたい思いだった。
その時、背後の廊下からスマホの着信音がした。
談話室はスマホの使用が許されている部屋なので
スマホの着信音を鳴り響かせながら、談話室に飛び込んでくる気配がした。
「はい、雨宮です」
えっ?
竹本は電話を受け応えの声のする方を慌てて振り返った。
「静香!!」
「えっ?竹本さん?」
両者とも、お互いの顔を見つめあったまま、しばらくはなにも言えずにいた。
静香が握りしめているスマホからは部長のダミ声が漏れていた。
- 雨宮くん、どうした?
君、何かあったのかい?
病院の方に姿を現さないって竹本が心配して電話をくれたんだよ。
もしもし?お~い、どうした?雨宮くん、聞こえているんだろう?返事をしてくれ! -
すぐさま我に返った静香がスマホをかまえて
「すいません、折り返し電話します」と部長に伝えて通話を切ると、竹本のそばに駆け寄った。

