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大きなクリの木の下で
第14章 竹本伸和の正体

- はい、こちら○○出版社でございます -
呼び出しコールが二度ほどで電話は繋がった。
「すいません、私、そちらに勤務している校正部の竹本です」
- あら?竹本さん?もしかして退院されたの? -
電話の相手の声には聞き覚えがあった。
相手は名乗らなかったけれど、庶務課の日向という女性に間違いない。
「いや、もう少し時間がかかりそうなんだけど…
すいませんが、校正部の飯沢部長に繋いでもらえませんか?」
- わかりました。しばらくお待ちください -
軽快なオルゴールメロディが流れて、しばらくすると「よお!竹本君!どうした?何か用があるんならスマホに掛けてくれればいいのに」と懐かしいダミ声が受話器から聞こえてきた。
「それが、スマホは例の格闘の時にぶっ壊れてしまって…」
- ああ、そうか、そうなんだね。
で、今日は何か?急を要するのならそっちに付き添いに行かせている雨宮くんに伝えてくれればいいのに -
やはり部長も静香は僕の付き添いをしていると思っているようだ
「雨宮さん、ここんところこちらに来てくれないんですけど…」
- 何?本当かね?
いや、彼女には君の付き添いをしてもらうってことでまとまった休暇を与えているもんでね
こちらには顔を出していないよ 。
変だなあ…もしかして看病疲れで寝込んでいるんだろうか? -
こっちにも来ていないし、会社にも顔を出していない?
美代子の件以来、何だか嫌な予感がした。

