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大きなクリの木の下で
第14章 竹本伸和の正体

「や~めた、何だかバカバカしくなってきちゃったわ」
腰を浮かせて理恵のヒップが顔面から遠ざかってゆく。
「こめんよ、つまらない男で…」
「ほんとよ、あのリハビリルームの個室ブースでギラギラしていたあなたの方がカッコ良かったわ」
ジャージズボンを履き直して、残された時間をおしゃべりタイムに切り替えたのか、着衣を整えるとベッド脇の椅子に理恵は腰かけた。
「で…どこのどいつよ、あんたを腑抜けにしちゃった女というのは」
気持ちよくさせてくれなかったんだから
全て白状しなさいよと理恵は気色ばんだ。
「同じ職場の同僚なんだけどね」
曖昧に言葉を濁せばいいのに
静香との事を誰かに聞いてもらいたくて竹本は素直に話し始めた。
「同じ職場の同僚?
なら、電話で会いに来て欲しいと呼び出せばいいじゃん」
「それがほら、スマホがいかれちゃってさ…
連絡を取るにも取れないんだよ
元より彼女とは連絡先の交換はしていないから彼女に直接連絡も出来なくてさ」
「バカねえ、直電でなくても良いじゃない
その彼女は今でも退職せずに今までの会社にいるんでしょ?
だったら、会社に連絡して繋いでもらえばいいじゃん」
「だからぁ、その会社のアドレスも全て消えちまったんだよ
だから、ここを退院して自分から会社に出向かなければいけないんだ」
本当に世話のやけるおバカさんだこと…
彼女はそう言うと、テーピングやらハサミが無造作に突っ込まれているバッグからスマホを取り出した。

