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大きなクリの木の下で
第13章 刑事 真垣幸太郎

真垣が「トイレのドアは開けないで!」と言うよりも早く、静香はドアを開けてしまった。
そして、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。
そこはすでにトイレと呼ぶよりも物置きと化していた。
相棒の片岡から「ジャケットを貸してやった例のお嬢さんがそっちに行くぞ」と連絡をもらって、とりあえず脱ぎ捨てたままの下着やゴミ袋、部屋中に転がっていたビールの空き缶、挙げ句の果てには何冊あるんだと言うほどのアダルト雑誌とオナニーに使用するテンガ(いわゆるアナホール)の数々をひっくるめてトイレの中に隠していたのだ。
そんな生活臭の山盛りがドアを開けた瞬間に崩れ落ちてきた。
「だからダメだと言ったのにぃ!」
恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら恥ずかしがる真垣に対して静香は『やっぱり独身男性の部屋ってこんなものよね』とある程度は予想していた。
「掃除機と雑巾、それと洗剤、用意していただけますか?」
静香が掃除してあげますよと願い出ても
真垣は頭が真っ白になって呆然としていた。
「ほらっ!何をボーとしてんのよ
掃除機はどこ?洗濯機に下着をぶっこむから洗剤は?」
大きな声で急き立てられて、ようやくハッとして「掃除機はここに…あ、洗剤は洗濯機の隣…」と自分も片付けなきゃとあたふたし始めた。
「いいの、あなたは座っていて、こういうことは女がやる方が早いんだから」
またお節介病が発病したわと思いながら
静香は洋服の袖を捲って動き始めた。

