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大きなクリの木の下で
第13章 刑事 真垣幸太郎

アドレスのメモを受け取って、静香は少し困った顔をしたけれど、やはり年配者の言うように直接に手渡しするのがいいわよねと考え直した。

「ありがとうございます、早速、訪ねてみます」

深々と一礼をして静香が部屋から出ていくと、
片岡はすぐさま相棒の真垣に連絡を入れた。

- はい… -

寝ていたのだろうか、それとも二日酔いか?
なんだか喉がイガイガしているような声で通話に応じた。

「なんだ、お前、寝てたのか?
今からそっちにお嬢さんが行くからよぉ、身だしなみを整えてお招きするんだぞ、いいな!」

- お嬢さん? -

「例の雨宮さんって人だよ
お前のジャケットを返しに行くんだとさ」

- ええ?!雨宮さんが!
そりゃ、大変だぁ!! -

よほど驚いたのか、通話の真垣の声が裏返っていた。


警察署を後にした静香は汚い走り書きのメモを便りに目的の真垣の部屋を目指していた。

「あん、やっぱり面倒くさいわぁ…
無理やりにでも、あの年輩の刑事さんに渡しておくべきだったわ」

病み上がりの体に、いくら近所だからとはいえ、徒歩での移動はつらかった。

「ここね…」

到着したのは竹本のボロアパートと似たり寄ったりの
傾きかけたような朽ち果てるようなアパートだった。
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