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大きなクリの木の下で
第12章 二度目の外泊許可

「待って!ねえ待ってよ!!」
健常な時の竹本ならば、決して由里子に追い付かれる事はないが、悲しいかな骨折が完治していない状態なので、いくら懸命に足を動かそうにも足を引きずる歩き方なのですぐさま追い付かれてしまう。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
泣きじゃくりながら由里子は竹本の背中にしがみつく。
「何も謝ることはない
騙されて所帯を持つことを回避できたのだから僕には痛くも痒くもないさ
ただ、子作りマシーンのように思われて、心の底からあなたを愛せなくなっただけです」
「違うの!私、本当に赤ちゃんがほしかったの!
だから…男は一人より二人の方が確率は高くなると思って…」
「幸いにも、君のお腹の中には命が宿ったんだ
その子種の持ち主と所帯を持てばいい
僕のことは金輪際忘れてくれ」
運良くそこへ一台のタクシーが通りかかった。
手を挙げてタクシーを捕まえると一緒に乗り込もうとする由里子を制した。
「運転手さん、○○病院に行ってくれないか」
「はい、了解しました」
由里子を一人取り残してタクシーは深夜の大通りを疾走する。
しばらく走行したのち、ドライバーがバックミラーで竹本の顔を確認して「あれぇ?お客さん!あの時の正義の味方じゃないですか!」とすっとんきょうな声を出した。
正義の味方?こいつは何を言っているんだ?
そう思いながらダッシュボードに貼られているドライバーの顔写真を見て、竹本は「あっ!」と大きな声を出した。

