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大きなクリの木の下で
第11章 薬物依存症の美代子

美代子はテーブルに肘を付いて太平洋の水平線を眺めていた。
サクサクと芝生を踏みしめる音に気づいて、美代子は視線を水平線から、芝生を踏みしめる音の方に切り替えた。

「あら?静香?」

以外と元気そうだった。
本人の体調の具合もありますので会話は手短にお願いしますと看護師から注意をされていたけれど、これならいつもと同じように笑いながら話が出来ると思った。

「会いに来てくれたの?」

見舞いに来てくれるのを心待にしていたように美代子はとびっきりの笑顔を見せてくれた。

「こんにちは…
いろいろと忙しくて会いに来るのが遅くなっちゃったわ」

「ううん、そんなことはいいのよ
会いに来てくれただけで嬉しいわ」

さあ、ここにお座りなさいなと
テーブルの対面の椅子を指差す。

「いい天気ね」

「ほんとう…とても気持ちがいいわ」

- そんな挨拶なんかどうだっていいんだ
早くどのように拉致監禁されたのか聞き出してくださいな -

イヤホンから少し苛立った年輩の刑事の声が飛んでくる。

「ねえ…ところで…拉致監禁された時の事は覚えている?」

「覚えているわ」

「どこであいつらと遭遇したの?」

「あいつらって?」

「例の三人組よ…覚えているんでしょ?」

三人組というワードが出た瞬間、
穏やかだった美代子の顔に怯えが出始めていた。
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