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大きなクリの木の下で
第11章 薬物依存症の美代子

「見えてきました。
あの白亜の建物です」

運転手の若い刑事が小高い丘の上に立つ綺麗な建物を指差して静香に教えてくれた。

薬物依存症回復施設と言われなければ
まるでリゾート施設を思わせるような美しい外観だった。

到着を施設側に連絡しておいたのだろう
玄関口のエントランスに一人の白衣を着た女性が待ち構えていた。

「すいません、無理を言いますが宜しくお願いします」

年輩の刑事が旧知の間柄のように白衣の女性に向かって「よっ!」と手を上げて挨拶する。

「遠いところありがとうございます」

その挨拶を無視をして、
白衣の女性は先を急がせる。

無視された年輩の刑事は、上げた手のやり場に困って
誤魔化すかのように頭をポリポリと掻いた。

「あの強面ですからね
女性からは敬遠されるんです」

若くてハンサムな刑事が静香の耳元に口をよせて内緒話でもするかのようにコッソリと教えてくれた。

背が高くて、おまけにハンサムだから
刑事という事を黙っていればかなりモテるに違いないと静香は思った。

三人は白衣の女性に導かれて、建物の裏側の庭園に案内される。

「わあ~、すごく綺麗な景色!」

静香は思わず感激してしまった。

建物自体もリゾートホテル並みだったが、
小高い丘から見下ろす太平洋の大海原は絵に書いたようなロマンチックな景色だった。

「療養施設でなければデートするにはもってこいなんですけどね」

まるでエスコートするかのように
静香の隣に寄り添ってくれて、彼女自身もハンサムな彼に寄り添ってもらえてまんざらではなかった。
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