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大きなクリの木の下で
第11章 薬物依存症の美代子

どうぞご乗車ください。

覆面パトカーで来ればいいのに
大層にパトカーを玄関口に横付けしているものだから、来院される方たちが何事か捕り物でもあったのではないかと足を止めて遠巻きに見ていた。

そこへ両サイドから刑事に挟まれるようにしてパトカーに乗り込まされるものだから、まるで静香が何かの犯人で連行されるみたいでバツが悪かった。

「少し遠いので楽な姿勢がよろしいですよ」

運転席に座った若い刑事がシートベルトを締めながら、後ろを振り向きもせずにそのように話してくれた。

「遠いんですか?早く家に帰って支度を済ませて竹本さんのお見舞いに行きたいんですが…」

「千葉まで行きます
なるべく急いで向かいますので」

そう言うと静香の隣に陣取った年輩の刑事が「おい」と運転席の若い刑事に指示すると、わかってますよとばかりに赤色灯を回してサイレンを鳴らして走り始めた。

『やだわ…これじゃ、まったく連行されるようじゃない』

思わず静香は外から見られないように顔を伏せた。

遠いと聞かされていたように二時間近く車に揺られた。
緊急車輌として信号無視をして走って二時間もかかるのだから、一般車輌なら所要時間は三時間ぐらいになるかもしれない。
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