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大きなクリの木の下で
第11章 薬物依存症の美代子

入院費の会計を済ませるために病院の一階にある会計窓口に行くと、例の二人の刑事が静香を待ち構えていた。

「退院、おめでとうございます」

まったく心のこもっていない言葉を発しながら年輩の刑事がとおせんぼするように立ちふさがる。

「お陰さまで…
すいません、会計を済ませたいので…」

刑事の横をすり抜けて刑事を無視するように窓口に急いだ。

まるで容疑者を確保するかのような感じで
刑事が左右にピッタリと寄り添う。

「何だか犯人扱いね」

「いや、こりゃ失礼。
長年の刑事生活で労る接し方というのを忘れてしまってね」

会計をするために財布を取り出すと
財布の中を覗き込んでくるので「いい加減にしてください!」と、静香は思わず声を荒げた。

憤慨する声を発した事で、ようやく二人の刑事は2歩ほど後ずさってくれた。

それでも執拗に背後から声をかけてくる。

「退院したばかりでお忙しいでしょうが、
どうぞ、捜査にご協力願えませんか?」

言葉足らずの年輩の刑事の発言を補うように、若い刑事が「大場美代子さんの薬物依存症回復支援施設に連絡してあり、短時間なら面会が許されているんです。なので、その時間に間に合うようにご同行をお願いしたいのですよ」
振り替えると若い刑事がご協力くださいと深々と頭を下げていた。
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