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大きなクリの木の下で
第10章 リハビリテーション

静香と竹本、お互いの別々の時間が静かに動き始めていた。

コンコン…

竹本の病室のドアがノックされて
その音で彼はすべての思考を中断させられた。

「竹本さん、リハビリに行きましょうか?
ご準備はいいですか?」

病室にリハビリ担当の村中理恵が入ってくると
殺風景な病室に爽やかな風が吹き抜けてきたように
華やいだ雰囲気になる。

「はい、よろしくお願いします」

「はい、では参りましょうか」

ご自分で車椅子に移れます?
そのように言われて、本当は自分で移動出来るのに
「出来れば補助していただいた方が…」なんて甘えてしまう。

「わかりました、肩をお貸ししますのでどうぞ寄りかかってください」

待ってました!とばかりに、竹本は彼女の体に寄りかかる。

体幹がしっかりしているのか、
大柄な竹本が体重をかけても彼女はびくともせずに彼を受け止めてくれた。

どうして美人というのはこんなにもいい香りがするのだろう。
街中ですれ違う女のなかには匂いで追跡できそうなキツイ匂いをさせている人もいるが、そのような類いの匂いではなく、マジで男を惹き付けるような匂い。
それをフェロモンというのかもしれないが、まさしく男を虜にする良い匂いだった。

「竹本さん?ほら、しっかりと車椅子に移らないと」

いつまでも彼女にしがみついているものだから
彼女が痺れを切らして早く次の行動に取りかかりなさいと注意した。
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