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大きなクリの木の下で
第9章 由里子の家
「で…その患者さんのお名前とお歳は?
どんな仕事をされている方なの?」
矢継ぎ早に質問をして、ハッと我に返った登喜子は馬鹿馬鹿しくなって一人で吹き出してしまった。
これではまるで素行調査ではないか。
「患者さんのお名前は竹本伸和さんと仰って、大手の出版社に勤務されている25歳の男性よ」
「ちょ、ちょっと待って!」
プロフィールを聞かれた時のために何度も練習したのか、
由里子はよどみなく答えたが年齢を聞かされて母の登喜子は驚いた。
「25歳ですって?!若すぎるわ!」
「愛し合っていたら年齢差なんて関係ないわ!」
若すぎると母になじられて、由里子は思わず愛し合っていると言ってしまった。
「そう…愛し合っているのね?
その男性もあなたでかまわないと言ってくれてるのね?」
思わず竹本の意思確認などしていないのだけれど、
あからさまに愛し合っていると言ってしまった以上、後には引き下がれなかった。
「そうよ!私たち将来を誓いあってるの!」
「それならいいわ、連れて帰ってきなさい
お母さんがこの目であなたにふさわしい男性か見極めてあげるわ」
歳の差カップルなど今じゃ珍しくもないけれど、
ほとんどが壮年男とうら若き乙女のパターンなので
女が15歳も年上など上手く行くわけなどない。
それでも自分の娘が恋する乙女の顔になっているのが母としては嬉しかった。
どうせ、数年もすれば破局するだろうけど、
せめてその間だけでも女として輝ける日々を過ごしてくれればいいと思った。

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