この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
大きなクリの木の下で
第9章 由里子の家

「さあ、どうぞ。
狭い部屋ですけどくつろいでくださいな」
由里子が両親だと紹介してくれたけれど、
どう見ても80過ぎの老人で祖父母の間違いじゃないかと思った。
「高齢でしょ、うちの両親」
「あ、いや…そんなことは…」
知らず知らずのうちに想像以上に高齢だと顔に出てしまったのか、由里子の部屋で二人っきりになると由里子が先手を打ってそのように語った。
「いいのよ、私、両親が遅い時に授かった娘だもん」
由里子自身が40オーバーの熟女なのだから
高齢出産したとしてたぶんご両親は80過ぎといったところか…
そんな話をしているとコンコンとドアをノックして
「由里子、食事の用意が出来るまで竹本さんとお風呂を済ませばどうかしら?」とお母さんがそのように告げた。
部屋に顔を出せばいいのに、部屋の中でイチャついているとでも勘違いしているのか、ドアを開けもしなかった。
「そうね、お風呂にしましょうか
病院では清拭ばかりで入浴は出来なかったから」
「あ、いや、左足はガチガチにギプスで固められているし
とてもじゃないがお風呂は無理だよ」
「シャワーでいいじゃない
タオルで体を拭くだけよりサッとでも流せば気持ちいいわよ」
風呂はおろかシャワーさえ浴びていない竹本にとって
彼女の提案はとても魅力的だった。
「そうと決まればバスルームに行きましょ
私、介助してあげるわ」
「いや、なんとか片足で立てるようになったし、
そこまで面倒を見てもらうわけには…」
「私を誰だと思っているの?
介助の事はナースに任せなさい」
車椅子に乗っているものだから
逃げるに逃げだせない。
まるで借りてきた猫のようにおとなしくバスルームに連れ込まれた。

