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大きなクリの木の下で
第8章 外泊許可

それから午後2時からの面会時間を首を長くして待ちわびた。
しかし、30分経っても1時間が経過しても静香が見舞いに来てくれることはなかった。
『部長は、しばらくは僕の看病のために彼女に休暇を与えると言っていたのに…
もしかして、急な仕事の依頼が来て彼女も駆り出されたのだろうか?』
そういうことはよくある話だった。
ライバル作家が新刊を出すという情報を入手すると、
それにあわせて対抗するかのようにこちらのお抱(かか)えの作家に新作を急がせるというのは結構な頻度で行われる。
そういう時は一つの小説を部員たちが分割して取り掛かり、
なんとしてでも相手の発刊日に合わせてこちらも新刊を発表するのだ。
きっと今回もそのような都合でこちらに見舞いにくることが出来なくなったものだとばかりに思った。
その代わりといっては何だが、
あの例の高慢ちきな態度で少しも白衣の天使と思えないナースが竹本の身の回りの世話をしてくれた。
小水のために尿瓶にペニスを突っ込んでもらう時も
場をなごますために冗談交じりで「どうですか?僕の息子、デカイでしょ?」なんて言ってみたのだが、ギロリと睨まれるだけで彼女は一言も発しなかった。

