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大きなクリの木の下で
第8章 外泊許可

『旨い!!』
彼女の唾液混じりのお茶がこんなにも美味しいとは!
思わず「もう一口」とおねだりすると
「うふふ、甘えん坊さんね」と再び湯呑みからお茶を口に含んでくれた。
そして、いざ口移しをしようと顔を近づけてきて時、コンコンとドアがノックされた。
そして間髪いれずに病室のドアが開いた。
今まさに口移しを仕掛けていたナースが慌てて顔を離したのでセーフだったとは思う。
入ってきたのは、別のナースだった。
「由里子さん、あなたまだ彼の介助をしていたの?
詰め所になかなか帰ってこないから様子を見に来たのよ
早く戻ってきなさいな、引き継ぎができないでしょ」
口調は穏やかだが、なんだかとげのある話し方だった。
「早く戻ってきなさいね」
そう言い残して彼女は出ていった。
「えへっ…怒られちゃった」
「すいません、僕が引き止めたばかりに」
「ううん、いいの。いつもあんな調子だから
私たち派遣のナースは正規ナースさんたちのストレスの捌け口みたいなものだから」
世話をしてくれているナースが由里子という名で派遣ナースだということを初めて知った。
「たぶん、先ほどのナースさん…大沢さんって言うんだけどね、私が日勤の間は彼女が夜間のあなたのお世話をすることになると思うわ」
えっ?さっきの?
あの怖い人が僕の担当?
そう思うと、先ほど口移しで飲ましてくれたお茶の後味が急に苦くなった気がした。

