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大きなクリの木の下で
第8章 外泊許可

静香がそんな状態だと知る由もなく、
竹本はナースの介助で昼食を取っていた。

朝の診察で左手の回復が著しくて
ギプスが外れて添え木のようなプロテクターが施された。
重いギプスが取れただけでこんなにも腕が軽いのかと驚いた。

「左手、使えるんでしょ?
一人で食べれるんじゃないの?」

スプーンで食事介助しながらナースが私だって忙しいんだからといつになく素っ気なかった。

「今朝、ギプスが取れたばかりで手を使うのが怖いんですよ
それに、ただでさえ不器用なものでして」

「別にいいんだけどさぁ、2時まで待って彼女に食べさせてもらえばいいじゃない」

「やることがなくてね、食事しか楽しみがないんだから2時まで待てないんだよ」

その分、夜中になれば、また気持ち良くしてあげるからさあと、ようやく動かせることができる事になった左手で彼女の尻を撫でてあげた。

「残念でした。私、夜勤シフトが終わって明日から日勤なの」

そう言って、スプーンに山盛りのご飯をすくって竹本の口に放り込んだ。

なるほど、深夜のお楽しみが失くなってしまうので苛立っているのだなと理解した。

さあ、これが最後の一口よ
これで家に帰ってゆっくりと寝れるわと食事のトレイを手にして病室を出ていこうとする。

「おいおい、食後のお茶ぐらい飲ませてくれてもいいじゃないか」

「まったく!私はあなたの世話女房じゃないんですからね」

ほら、せっかく左手が使えるようになったんだから自分で飲みなさいよとナースの苛立ちはピークに達していた。

「コップから飲むのって味気ないんだよね」

竹本の意を汲んだナースは「おバカなんだから」と
先ほどとは打って変わって甘い声を出すと、お茶を口に含んで口移しで飲ませてくれた。
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