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大きなクリの木の下で
第6章 救急病院にて

「あ、そうそう。しばらくは雨宮くんも休暇を与えるから、しっかりと竹本を介抱してやりなさい」
病室から去り際に校正部の部長はニヤニヤしながらそう言った。
二人がデキて結婚とかになれば、ここで恩を売っておけば仲人を頼むと言ってくるに違いないと人生初の仲人に名乗りをあげようと期待していた。
「珍しいな、部長が雨宮さんに休暇をくれるなんて」
「きっと何か魂胆があるのよ」
静香は愛しそうに竹本の頬を撫でながら柔らかい微笑みをくれた。
やがて頬を撫でていた手は、そっと竹本の頬を包み込みんで、
ゆっくりと顔を近づけてきた。
美しい静香の顔がすぐそばまで…
静香はそっと目を閉じた。
あ・うんの呼吸で竹本も目を閉じる。
唇が触れようかというタイミングでドアがノックされ、間髪空けずに「失礼しますね~」と熟年のナースがワゴンを転がして病室に入ってきた。
咄嗟に離れた静香だったが、キスをしようとしているのを、その熟年ナースは察しがついたようで「あら~、仲がよろしいのね」とイヤミを言った。
「あ、いえ、そんな…」
知らぬ存ぜぬを決め込めばいいのに
変に言い訳を取り繕うとするものだから静香は頭から湯気が出るほどに真っ赤になっていた。

