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大きなクリの木の下で
第6章 救急病院にて

翌日、一般病棟の個室に移されると、面会時間の開始と共に一番乗りで来てくれるはずと信じて疑わなかった静香が駆け込むように病室に来てくれた。
「よぉ!来てくれたんだね」
君が来てくれるのを待っていたんだよと
格好よく話を切り出す前に静香は号泣を始めた。
「えっ?あの、どうした?」
声をかけると、静香は大きな紙袋を放り投げて一目散にベッドに寝かされている竹本に抱きついて「バカ!バカ!心配したんだからね!」と力任せにしがみついた。
「痛い!痛いってば!」
「はっ!?ご、ごめんなさい!
私ったら…つい…」
力をゆるめてはくれたけれど、その手は大事な宝物を扱うかのように優しく撫でてくれた。
「気持ちいい…」
嘘ではなかった。
これほどまでに女性に撫でられるのが気持ちいいと感じたのは初めてだった。
「コホン…私も見舞いに来たんだが…
お邪魔なら退散しようかね?」
気づけば大きなフルーツ籠(かご)を抱きかかえた校正部の部長が気まずそうに立ちすくんでいた。

