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わたしのお散歩日記
第9章 放牧されて
 『美味しそうにしゃぶるね。欲しかったんだね』

 牛飼いさんはやさしくわたしの頭を撫でてくれる。だって、フランクフルト美味しいんだもの。舌を長く伸ばして夢中になってなめちゃう。

 『出すよ…』

 無調整の濃厚なミルクがお口の中一杯に噴き出されれる。すごい勢い。鼻の孔からも垂れてきそう。たっぷり味わってごっくんしちゃう。美味しくて思わず首を振ったら、首につけてる鈴が鳴るのかしら。しばらく味わってないわね。

 ポスターの牛を眺めながらそんなことを思っているなんてね。牛さんに親しみがわいてくる。優しそうな貌をしてるわね。でも、あらためてポスターをよく見てみたらオス牛みたい。

 日も傾いてきたし、喉も渇いてきちゃった。そろそろ小屋に戻らないと。

 「フランクフルトください。ええと、四本いただこうかしら」

 (ちょっと多かったかしら…)

 「どれにします?」
 「え?…あ…お任せします」

 (そう。それと、それと、それと、それ…。そうそう…)

 「はい。煮てよし、焼いてよし、フランク㈣本、〇〇〇円です」

 (グラム売りじゃないのよね)

 お財布から小銭を渡す。別におかしくないわよね…ほかにも買わなくても。

 紙袋を受け取ると、思ったよりしっかりした重さがうれしい。歩き出すと、揺れる感触が、指先から掌まで伝わってくる。

 (煮てよし、焼いてよし…か)

 袋をぶらぶらと揺らしながら、小屋への道のりをゆっくりと歩いていく。揺らすほどの胸はないのだけれど。小川の土手まで来て草の匂いがする。わたしは深呼吸しながらフランクフルトをどう料理するか思いを巡らせる。
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