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わたしのお散歩日記
第10章 写生会

秋めいて衣替え。すれ違う学生さんも夏服から冬服に変わった。
秋の学校行事で思い出すのは写生会。小学生の頃は画板と絵の具を持って近くの公園やお寺の境内に移動して絵を描いた。
中学校では、「美術」、「音楽」のどちらかから好きな科目を選ぶことができ、秋になると文化祭で、「美術」は書いた絵、音楽はコーラスを展示、発表していた。
わたしは「美術」を選び、その日は写生会と称して、文化祭で展示する絵を描くために、校内の好きなところで写生をすることになった。
先生からなにか話があって、いよいよ道具を持ってそれぞれ校内に出て行く。同級生三人くらいがなにやらコソコソ話をしては、クスクス笑っている。わたしが近づくと慌てて話をやめ、しばらくするとまたコソコソ、クスクスしながら、教室の外に出て行ってしまった。
ちょっと疎外感を感じて戸惑ってしまう。まあ、この子たちって、いつもそんな感じだからいいんだけど…。戸惑うほどのこともないか…と思っていると、声を掛けてくれた同級生がいた。
『気にすることないってば。つまんない話よ』
いつも誰とも群れずに孤高な雰囲気を漂わせているA子ちゃん。そのときは、なんとなくの流れで、ふたりで同じ場所に座って写生を始めることになった。
『この前、保健の授業があったでしょ』
A子ちゃんが画板にとめた画用紙に鉛筆を走らせながら話し始めた。
『うん。あったね』
『第二次性徴のところでさ、”シャセイ”って出てきたじゃない』
『うん…』
保健の先生は『精子を体の外に出すことを射精と言います』って言っていたかな。わたしには敷居が高い…というか、全然ピンと来ていないのだけど、でも、興味がないわけじゃない話題。
『さっき先生があんまり”シャセイ”、”シャセイ”って言うからさ、あの子たち、そのことを面白がっていただけよ』
『あ、そうだったんだ…』
教室の後ろの方で、全体を見渡して観察していたのだろう。コソコソ話もわたしが戸惑っていたことも。
『わたし、なんだか仲間外れにされちゃったような気がして』
『損な性格だねぇ』
A子ちゃんは画用紙に目を落としたまま呆れたように笑っている。
秋の学校行事で思い出すのは写生会。小学生の頃は画板と絵の具を持って近くの公園やお寺の境内に移動して絵を描いた。
中学校では、「美術」、「音楽」のどちらかから好きな科目を選ぶことができ、秋になると文化祭で、「美術」は書いた絵、音楽はコーラスを展示、発表していた。
わたしは「美術」を選び、その日は写生会と称して、文化祭で展示する絵を描くために、校内の好きなところで写生をすることになった。
先生からなにか話があって、いよいよ道具を持ってそれぞれ校内に出て行く。同級生三人くらいがなにやらコソコソ話をしては、クスクス笑っている。わたしが近づくと慌てて話をやめ、しばらくするとまたコソコソ、クスクスしながら、教室の外に出て行ってしまった。
ちょっと疎外感を感じて戸惑ってしまう。まあ、この子たちって、いつもそんな感じだからいいんだけど…。戸惑うほどのこともないか…と思っていると、声を掛けてくれた同級生がいた。
『気にすることないってば。つまんない話よ』
いつも誰とも群れずに孤高な雰囲気を漂わせているA子ちゃん。そのときは、なんとなくの流れで、ふたりで同じ場所に座って写生を始めることになった。
『この前、保健の授業があったでしょ』
A子ちゃんが画板にとめた画用紙に鉛筆を走らせながら話し始めた。
『うん。あったね』
『第二次性徴のところでさ、”シャセイ”って出てきたじゃない』
『うん…』
保健の先生は『精子を体の外に出すことを射精と言います』って言っていたかな。わたしには敷居が高い…というか、全然ピンと来ていないのだけど、でも、興味がないわけじゃない話題。
『さっき先生があんまり”シャセイ”、”シャセイ”って言うからさ、あの子たち、そのことを面白がっていただけよ』
『あ、そうだったんだ…』
教室の後ろの方で、全体を見渡して観察していたのだろう。コソコソ話もわたしが戸惑っていたことも。
『わたし、なんだか仲間外れにされちゃったような気がして』
『損な性格だねぇ』
A子ちゃんは画用紙に目を落としたまま呆れたように笑っている。

