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誰にも言えない、紗也香先生
第5章 川沿いのキャンディゲーム

川沿いの夜は、街のざわめきから少しだけ遠くて、代わりに水音が耳に心地よい。
すぐ向こうには繫華街の灯りが揺れて、こちら側はまるで静かな舞台のようだった。
私は、短い丈のページコートの裾を整えながら、そっとベンチに座る。
隣には、今日も完璧な重役秘書風のリザが、脚を組んで微笑んでいた。
「はい、キャンディゲーム、続きましょう?」
無糖の小さなキャンディが、私たちの口から口へ、
舌でそっと押し合いながら転がっていく。
リザの舌はいつも大胆で、私はそれに押されてふわふわしてしまう。
逆に、私の舌先がリザの口の中へ忍び込む瞬間には、
なんだかくすぐったくて、でもちょっと誇らしくなる。
そんな時間は永遠みたいだったのに――
「……あっ」
カラン、と音を立てて、小さな透明の粒が私の唇をすり抜けて、ベンチの上に転がった。
「……あら? 落としちゃった?」
リザが楽しそうに私を見る。
私は肩を落として、俯くしかなかった。
「負けた子には……そうね、罰ゲーム、何がいいかしら」
その目がすこし意地悪く光った時、私は思わず息を呑んだ。
コートの下の、首元に揺れる銀のチェーンが、リザの手に取られる。
ベンチの背もたれにくるりと巻きつけられ、カチ、と何かが留まった音がした。
「このまま、置いていこうかしら。
サヤみたいな可愛い子犬……ホームレスたちに見つかったら、きっと可愛がってもらえるでしょう?」
「や、やだ……リザ、うそ……そんなの……」
涙が込み上げそうになって、声が震えてしまう。
でも、リザはふふっと笑って、私の髪を撫でてくれた。
すぐ向こうには繫華街の灯りが揺れて、こちら側はまるで静かな舞台のようだった。
私は、短い丈のページコートの裾を整えながら、そっとベンチに座る。
隣には、今日も完璧な重役秘書風のリザが、脚を組んで微笑んでいた。
「はい、キャンディゲーム、続きましょう?」
無糖の小さなキャンディが、私たちの口から口へ、
舌でそっと押し合いながら転がっていく。
リザの舌はいつも大胆で、私はそれに押されてふわふわしてしまう。
逆に、私の舌先がリザの口の中へ忍び込む瞬間には、
なんだかくすぐったくて、でもちょっと誇らしくなる。
そんな時間は永遠みたいだったのに――
「……あっ」
カラン、と音を立てて、小さな透明の粒が私の唇をすり抜けて、ベンチの上に転がった。
「……あら? 落としちゃった?」
リザが楽しそうに私を見る。
私は肩を落として、俯くしかなかった。
「負けた子には……そうね、罰ゲーム、何がいいかしら」
その目がすこし意地悪く光った時、私は思わず息を呑んだ。
コートの下の、首元に揺れる銀のチェーンが、リザの手に取られる。
ベンチの背もたれにくるりと巻きつけられ、カチ、と何かが留まった音がした。
「このまま、置いていこうかしら。
サヤみたいな可愛い子犬……ホームレスたちに見つかったら、きっと可愛がってもらえるでしょう?」
「や、やだ……リザ、うそ……そんなの……」
涙が込み上げそうになって、声が震えてしまう。
でも、リザはふふっと笑って、私の髪を撫でてくれた。

