この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
誰にも言えない、紗也香先生
第6章 アリス

今日は、リザとの約束の日。
目覚めた時から、心臓がずっと落ち着かない。
現実の私は、英語教師・松島紗也香。けれど今の私は、"サヤ"という、誰も知らない物語の中のもう一人。
お風呂場でシャワーの音が静かに響く中、
カミソリの刃が肌の上を、そっと滑った。
花のまわりの若草は、朝露のように消えて、
鏡に映る私は、どこか初めて出会うような顔をしていた。
新しく買ったベージュのガーターストッキングを丁寧に脚へ通し、
腰には赤いベルト。
そして、黒い男をゆっくりと、その内側に迎え入れる。
ベルトに固定されたその存在は、私の奥に沈み、静かに目を覚ますように身を沈めた。
鏡の前で化粧をする手は、少しだけ震えていた。
黒いアイラインが少しだけ揺れて、それでもその深さに吸い込まれるように――
"彼女"の目に似せた、自分の瞳を作る。
チョーカーを首に、ピンヒールのストラップを指先で締め、
コードのように這わせるハンドバッグの中には、革の手錠が一つ。
ドアを閉めた音が、現実に私を引き戻した。
その鍵を、ポストにそっと忍ばせる。
まるで、「紗也香先生」という仮面を、郵便受けに預けるみたいに。
すぐ下の住人のドアが閉まる音がして、
私は階段を降りながら、ふと思った。
「この秘密が、もし勇くんに見つかったら……どうなっちゃうんだろう?」
でも、今はまだ――
この秘密の“ファンタジー”は、私だけのもの。
静かな興奮を足音に忍ばせながら、
私はリザの待つ場所へ、今日もゆっくり歩いていく。
目覚めた時から、心臓がずっと落ち着かない。
現実の私は、英語教師・松島紗也香。けれど今の私は、"サヤ"という、誰も知らない物語の中のもう一人。
お風呂場でシャワーの音が静かに響く中、
カミソリの刃が肌の上を、そっと滑った。
花のまわりの若草は、朝露のように消えて、
鏡に映る私は、どこか初めて出会うような顔をしていた。
新しく買ったベージュのガーターストッキングを丁寧に脚へ通し、
腰には赤いベルト。
そして、黒い男をゆっくりと、その内側に迎え入れる。
ベルトに固定されたその存在は、私の奥に沈み、静かに目を覚ますように身を沈めた。
鏡の前で化粧をする手は、少しだけ震えていた。
黒いアイラインが少しだけ揺れて、それでもその深さに吸い込まれるように――
"彼女"の目に似せた、自分の瞳を作る。
チョーカーを首に、ピンヒールのストラップを指先で締め、
コードのように這わせるハンドバッグの中には、革の手錠が一つ。
ドアを閉めた音が、現実に私を引き戻した。
その鍵を、ポストにそっと忍ばせる。
まるで、「紗也香先生」という仮面を、郵便受けに預けるみたいに。
すぐ下の住人のドアが閉まる音がして、
私は階段を降りながら、ふと思った。
「この秘密が、もし勇くんに見つかったら……どうなっちゃうんだろう?」
でも、今はまだ――
この秘密の“ファンタジー”は、私だけのもの。
静かな興奮を足音に忍ばせながら、
私はリザの待つ場所へ、今日もゆっくり歩いていく。

