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わたしの放課後
第3章 はじめてのセックス
 『うれしいな。青空市でもなければ店にいるから。ああ、閉まっているように見えても戸は開いているから。また本を見つくろっておくね』

 おじさんがわたしのためにどんな本を用意してくれるのか。そう思うと気分が高揚する。『清楚で知的で性的好奇心が旺盛』なわたしに似合う本。おじさんから見ればティーンの女子高生なんて赤ん坊みたいなものだろうけど、わたしは背伸びをしてみたくなる。おじさんに『清楚で知的で』…そして『淫ら』な女と見られたい…なんて。だって、わたしはおじさんにバージンを捧げたのだもの。オナニーの妄想の中でだけど…。

 わたしは家に帰っておじさんが選んでくれた本を読み耽った。3冊目は短編集だった。そしてわたしの背中を強く押す一篇に出逢った。少女が初老の男と愛欲に耽る日々を綴った一篇…。理性と感情の間を揺れ動きながら男にのめりこんでいく少女…。少女の中に大人の女を垣間見て戸惑う男…。わたしはおじさんとセックスする妄想に耽った。はじめてのときよりもより明確なイメージで…。

 二日後の金曜日。朝、わたしは母に言った。

 『今日は、学校で勉強してくるから、帰りが遅くなる…ような気がする』

 母がきょとんとした顔で聞き返す。

 『なあに? 『気がする』って』
 『え? ああ…帰りが遅く…なる』
 『遅くなるのね? わたしも今日は塾の日だから…。じゃあ、ごはんどうする?』
 『〇〇〇で食べてくるよ』

 わたしはファストフードの名前を口にした。

 『そう。じゃあ、今日はお夕食つくらないでいいわね。…なんか、気を遣ってない?』
 『え? なにも』
 『じゃあ、いってらっしゃい』

 母は帰りが遅くなるというわたしにその理由を訊ねることもなく、朗らかな声で送り出されてしまった。もちろん、もし訊ねられても、おじさんに抱かれてくるなどと正直に答えるはずもないのだけれど。

 母の寝室のベッドサイドにある小箱から避妊具をくすねたことも知らないだろう。母はきっと今日もあの大学生と使うのだろうし、父への口止め料と思えば罪悪感も軽くなる。母の朗らかな声を聞くたびに、くすねても気付かれないだろうと思えるくらい小箱に詰め込まれた避妊具が目に浮かんでしまう。
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