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わたしの放課後
第3章 はじめてのセックス
 おじさんはわたしの胸に押し当てた手のひらをゆっくりと回すように揉み始める…。

 「わたしもうれしかったです。おじさんがわたしのために本を選んで用意してくれてたなんて思っていなかったから…」
 「恵子ちゃんみたいなお客さんは滅多にいないからね。お客さんが読んでくれそうな本を選ぶのもこの商売の醍醐味なんだ。恵子ちゃんが探していそうな本を探している自分が自分で微笑ましく思えたりもしてね…」

 わたしはおじさんの手に自分の手を重ねる。

 「選んでくれた本、みんな『当たり』でした…」

 テントでおじさんとお茶を飲みながら、おじさんが見つくろってくれた本をめくってみる。この前かった作家とは違う人が書いた本でわたしが知らない人ばかり。古い本だから当たり前だけど、いつも参考書などを買っている大きな本屋さんでは見たことのない本。というか、置いてなさそうなジャンルの本。先週、わたしが選んだようなちょっと変わった恋愛の本…。さりげなく値札を探したけど、綺麗に剥がしてあって値段はわからなかった。

 『今日の本、はじめての作家さんばかりですけど、たぶんみんな好きです。なんでわかるんですか?』
 『なんで…っていうこともないけど、もちろん、この前お嬢さんが選んだ本が出発点になっていてお嬢さんの好きなジャンルの見当はつけてはいるけど、あとはお嬢さんからにじみ出てくる『雰囲気』かなあ…。清楚で知的で…きっと…あっ、いや…』

 おじさんはひとりで慌ててまごついている。『清楚で知的』かどうかはわからないけど、おじさんが口を濁した次の特性は…『性的な好奇心が旺盛』というあたりだろうか。おじさんはきっと当ててくれている。だって、この前の本はそういう本だから。

 『いろいろな作家さんがいろいろな作品を書いているからね。いろいろ読んでみるといいよ。自分にいちばんしっくり来るのは誰か…ってね。もっともっといっぱい紹介してあげたいな…』
 『ありがとうございます。…お店『ひかり町』にあるんですか?』

 本が入っている紙袋にお店の名前と住所、電話番号がゴム印で押されている。

 『そう。ここから3駅』

 電車の中に掲示された路線図に記された駅名の中に見覚えがあった。

 『今度、行ってもいいですか?』
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