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夜に咲く名前のない恋人達
第8章 「心配するな」
ライブが始まった。

ステージの上で、ぷりんは必死に笑顔を作る。

しかし、心が追いつかない。

振り付けを間違え、立ち位置を間違え、歌割りも飛ばした。

ミスをすると、焦りが焦りを呼んで、次々とミスを連発してしまう。

落ち着かなきゃ……

ちゃんとしなきゃ……

そう思えば思うほど、指先が震えて、足元がふらついた。

弱気になった瞬間、頭の中に浮かんだのは、無表情のルカの顔。

「うっ……」

ぷりんは耐えきれなかった。

涙が溢れ出して、視界がぼやける。

音楽が流れる中、ぷりんはステージの真ん中で涙を拭って俯き、完全に足が止まってしまった。

もう無理だ……

次の瞬間、ぷりんは曲の途中なのに、泣きながらステージの袖へと走り去った。

毎日のようにライブが行われる地下アイドル業界では、こういったハプニングは、珍しい事ではない。

プライベートでの悲しい出来事。

SNSでの誹謗中傷。

降りかかってくる問題に対して、『ステージに立つ以上、プロとして振る舞え』というのは、まだ若い女の子には無理な話である。

だから特に観客も騒ぎ立てたりしない。

客席から見えないステージの袖で、ぷりんは泣き崩れた。

「っ……うぅ……」

すぐに駆け寄ってきてくれたのは、夢愛だった。

「ちょっとっ!! どうしたのっ!?」

「すいません……なんでもないです……」

必死に涙を拭うが、涙が止まらない。

「……ちょっと落ち着いたら、ステージに戻ってきて」

夢愛はそう言い残してステージへと戻っていった。

グループの持ち時間が決まっているフェスでは、ぷりんがいなくても、ライブは進んでいく。


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